熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 高市政権の「骨太の方針」の成否は成長投資、危機管理投資の結果次第
成長投資、危機管理投資に関しては、費用対効果を踏まえた優先順位付けを伴う客観的な制度の構築、EBPMの推進等が不可欠
2026年06月30日
サマリー
◆高市政権が策定中の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)の成否は、看板政策である成長投資、危機管理投資の結果次第である。成長投資、危機管理投資に関しては、費用対効果を踏まえた優先順位付けを伴う客観的な制度の構築等が不可欠だ。
◆そもそも、政府が特定産業を支援する産業政策には、3つのリスクが内在している。第一に、政府の情報制約に起因する支援対象産業の選定に伴うリスクがある。第二に、政策に関するロビイング競争による弊害が指摘できる。第三に、政府支援がなくても実施されていた民間投資に対して支援を行い、不要な財政支出が生じるリスクがある。
◆こうした産業政策に内在するリスク等を踏まえると、戦略分野が17個もあるのはあまりに多すぎる。今後、成長投資や危機管理投資については、も分野に優先順位付けを行うことが喫緊の課題である。責任と権限の所在を明確化すると同時に、第三者がリスクとリターンを客観的に評価し、成果が出なければ撤退する仕組みを、最初から制度的に組み込まなければならない。また、「EBPM(証拠に基づく政策立案)」を推進するという観点からは、政策の有効性を事後的に検証するために必要な「エビデンス(証拠)」を収集できる仕組みを、事前に構築する必要がある。
◆危機管理投資に関しては、中国からの輸入停止について、「発生頻度」と「危機時の影響の大きさ」の異なる2種類のリスクを想定した上で、モンテカルロ・シミュレーションという手法を用いて、各リスクの発生確率を考慮した10年間のGDPへの累積的な影響と、危機管理投資で期待される影響緩和効果をそれぞれ試算した。シミュレーションの前提としては、「ミドルリスク」として、日中関係の悪化などを受けて10年に1回の頻度で中国から一部品目(レアアース等)の輸入が途絶(危機時のGDPへの影響:最大年率▲3.4%)することを想定した。また「テールリスク」として、100年に1回程度の頻度で日中間の有事を受けた全面禁輸(危機時のGDP への影響:最大年率▲15.3%)が起こることを想定した。試算結果からは、高市政権が危機管理投資を進めるにあたっては、費用対効果を慎重に考慮した上で、リスク発現の蓋然性が比較的高い分野に対象を絞る必要があるとの強い示唆が得られた。
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