サマリー
◆ホルムズ海峡の実質的な封鎖以降、中東からの重要物資調達に関する問題が注目されているが、物流の混乱の影響を受けるのは中東向けの輸出も同様である。中東情勢の悪化前はホルムズ海峡周辺国への財輸出の半分を自動車が占め、自動車産業にとってホルムズ海峡の通航が制限される影響は大きい。
◆本レポート執筆時点では、自動車の輸出に使われるRORO船のホルムズ海峡通過数は米国とイスラエルによるイラン攻撃後ほぼ皆減した一方、紅海側のバブ・エル・マンデブ海峡とスエズ運河を通過したRORO船の数は増加傾向にある。しかし、紅海沿岸国でもあるサウジアラビアへ向けた4月の新車輸出台数はゼロとなっており、4月時点では日本からホルムズ海峡周辺国への代替ルートの確保は進んでいないようだ。
◆中東向け新車輸出が95%減少し、その分国内の乗用車生産も減少した場合、実質GDPの押し下げ幅は0.35%程度と試算される。4月時点では、国内販売と欧州、カナダ、メキシコ向け輸出の好調に支えられ、国内乗用車生産は維持されているが、こうした下支え要因が剥落した場合、日本経済には強い下押し圧力がかかることになろう。
◆ホルムズ海峡経由の物流がイラン攻撃前の状態に回復するには一定の時間がかかるとみられ、今後も中東以外の地域における自動車輸出の拡大を図っていく必要がある。米国とイランが戦闘終結のための最終的な合意に至るかどうかは不透明で、ホルムズ海峡が再び封鎖される可能性も否定できない。不確実性が高い中でも中東の自動車需要を取り込んでいくためには、ホルムズ海峡を通過しない代替ルートの確保に向けた企業の取り組みを政府は後押しすべきだ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
-
中東産原油等の輸入10%減少で日本経済はマイナス成長へ
日本は主要輸出先も中東依存度が高く、原油等の供給不足に脆弱
2026年03月18日
同じカテゴリの最新レポート
-
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
-
2026年5月消費統計
サービスと半耐久財が強く、総じて見れば前月から増加
2026年07月07日
-
Fable 5の提供再開が示すAI規制の限界
個別モデルの規制から普及を前提としたルール形成へ
2026年07月03日
最新のレポート・コラム
-
2025年度の個人向け社債市場の動向
発行額は過去最高に。今後は発行体の裾野が広がるかが注目点
2026年07月10日
-
外為法審査による買収案件中止とその示唆
外為法に基づく投資審査制度と判断のポイント
2026年07月10日
-
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
-
米国:AI関連投資の持続性を左右する3つの要因
①ハイパースケーラーの収益化志向、②「循環資金」が内包するリスク、③レバレッジ型ETFによる変動拡大
2026年07月09日
-
実務手引き「社債発行のガイドブック」— 社債発行への入り口
2026年07月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
-
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
-
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
-
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日

