経済安全保障の新局面における注目点②

米大統領選で揺れるIPEF/トランプ関税で日本の輸出はむしろ増加?

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2024年10月01日

サマリー

◆近年、「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の交渉進展を中心に日本を取り巻く経済安全保障の強化が加速している。IPEFにおける4つの交渉分野のうち3つが署名・発効に至っており、残る「貿易」分野では貿易手続き負担の軽減などについて交渉の進展があったという。仮に日本の貿易関連手続きにかかる負担が米国並みに低下すれば、マクロでは金額に換算して年間1兆円程度の輸出コストの低下につながる。

◆もっとも、米大統領選でトランプ氏が勝利すれば、米国がIPEFから脱退する可能性が高い。この場合はIPEF参加国の経済規模の合計額が半分以下となり、IPEFの有効性は大幅に損なわれる。またハリス氏が勝利した場合においても、「貿易」分野の交渉に含まれるデータ管理に関する項目が足かせとなり、完全妥結には時間を要するとみられる。

◆トランプ氏が掲げる高水準の関税が実現すれば、日本の輸出企業の収益性が低下する半面、より高い関税率に直面する中国企業から輸出シェアを獲得する機会が生じる。とりわけ、一般機械や金属製品などの業種では相対的に輸出シェアが拡大しやすいだろう。他方、高関税による悪影響が比較的小さい米企業との競争激化には要注意だ。

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