サマリー
◆2023年1月の貿易統計によると、輸出金額は前年比+3.5%と前月から伸び率が急落した。季節調整値では前月比▲6.3%と3カ月連続で減少した。これらは中国の春節のずれによるところが大きく、実態は数値が示すほどには弱くないが、米欧の景気減速の影響が徐々に顕在化していることには注意が必要だ。輸入金額は前年比+17.8%と前月から伸び率が低下した。季節調整値では前月比▲5.1%と3カ月連続で減少した。これを受け、貿易収支は▲3兆4,966億円と過去最大の赤字額を記録したが、季節調整値では▲1兆8,213億円と前月からほぼ横ばいであった。
◆1月の輸出数量(大和総研による季節調整値)は前月比▲3.0%と3カ月連続で減少した。金融引き締めの影響が顕在化し米欧向け輸出が減少したほか、前述の春節要因によって下振れした。地域別に見ると、米国向け(同▲2.0%)やEU向け(同▲7.4%)が減少した一方、アジア向け(同+1.8%)は増加に転じた。このうち中国向け(同▲11.7%)は春節要因で下押しされたが、これを差し引いて見ればアジア向け全体の基調は悪くない。
◆先行きの輸出数量は、米欧の景気減速を主因に減少基調を辿ったのち、中国経済の回復や供給制約の緩和を背景に増加へ転じるとみている。中国では「ゼロコロナ」政策が撤廃されたものの景気回復が鈍く、短期的には中国向け輸出の増加が米欧向け輸出の減少を補うことは難しいだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
2022年12月貿易統計
輸出の伸び悩みなどにより2022年の貿易赤字額は統計開始以来最大に
2023年01月19日
-
2022年11月貿易統計
輸出は冴えないが輸入額の増加ペースが鈍化し貿易収支は改善
2022年12月15日
-
2022年10月貿易統計
対中輸出の減少と輸入金額の増加により貿易赤字が拡大
2022年11月17日
同じカテゴリの最新レポート
-
トランプ関税でインバウンドに黄色信号
中国人旅行客の伸びしろは大きいものの、他国の状況は厳しい
2025年09月16日
-
経済指標の要点(8/19~9/12発表統計分)
2025年09月12日
-
2025年9月日銀短観予想
製造業で業況判断DI(最近)は改善も、先行きへの警戒感は強い
2025年09月10日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日