セミマクロ分析から見る景気の先行き

緩やかな景気回復が続くも、需要の頭打ちで雇用が大幅減の可能性

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2020年10月07日

  • 経済調査部 エコノミスト 小林 若葉

サマリー

◆新型コロナウイルスの感染拡大および緊急事態宣言などの活動自粛要請が企業活動に与えた影響の大きさは業種によってまちまちである。感染拡大による影響が顕在化した3月以降、製造業では輸送機械工業などが、非製造業では生活娯楽関連サービスなどが全体の企業活動の低下に大きく寄与した。

◆輸送機械工業の生産の減少は、経済活動の制限・自粛の影響により国内外の自動車販売が人為的に抑制されたことが背景の一つだ。しばらくはペントアップ需要が発現することが期待できるものの、ペントアップ需要剥落後の自動車販売は雇用・所得環境の回復の鈍さなどから低迷することが見込まれる。また感染拡大の長期化が予想される中では、移動や接触を伴う消費自粛は続くとみられる。生活娯楽関連サービスは当面、感染拡大前の水準まで回復することは難しいだろう。

◆自動車産業は裾野が広いといわれているが、サービス業の生産波及効果もそれに匹敵する大きさである。輸送機械工業や生活娯楽関連サービスなどの業種で長期にわたり経済活動水準が元に戻らなければ、幅広い業種で雇用調整が一段と進められる可能性には注意が必要である。

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