サマリー
◆2013年末時点で、中国は第4位の移民出身国となっている(第1位はインド、第2位はメキシコ、第3位はロシア)。
◆中国が送り出す移民の増加は、中国にとってのデメリットがより強調されるが、当然のことながらメリットも無視できない。具体的には、(1)頭脳還流、(2)移民による国内送金、(3)華人・華僑による直接投資の増加、などがあげられる。
◆一方、移民増加に伴うデメリットについて、中国は、①優秀な人材の流出(頭脳流出)、②多額の資金の中国からの持ち出し(資金流出)、③「仇富」(庶民が富裕層に対して不満や恨みを抱くこと)と呼ばれる社会不安定要素の増大、といった問題を抱えるようになった。②の中国からの資金流出について、米ボストン・コンサルティング・グループによると、投資可能資産が600万元を超える中国人富裕層の保有資産は、2011年末時点で33兆元(当時のレートで約5兆2,381億米ドル)に達し、うち2.8兆元(同約4,444億米ドル)が海外に移転されたという。この金額は2011年の中国のGDPの3%に相当する金額である。③の「仇富」については、「裸官」のように、財産占有の方法が権力を悪用した不正行為によるものであれば、なおさらである。
◆裸官とは中国で不正に資産をため込んで、妻子(時には愛人)と資産を米国、カナダなどの先進国に移し、タイミングを見計らって本人も中国から出国しようとする腐敗官僚・党員のことである。裸官全体の人数や不正蓄財・送金金額について、正式な統計はない。中国社会科学院が2011年に発表した資料では、「裸官」を含む腐敗幹部は累計で1.8万人が海外に逃亡し、8,000億元(約13.2兆円)を持ち出したとしている。「裸官」の目的は投資ではなく、逃亡であり、受入国側にも雇用創出や納税などで期待された効果が上がっていないといった不満がでている。中国が取り組むべき課題は、巨額な不正蓄財をさせない、不正な海外送金をさせない仕組み作りである。腐敗撲滅のスローガンとして「トラ(大物)もハエ(小物)も叩く」というのはあまりに有名な言葉となり、2014年10月20日~23日に開催された中国共産党第18期中央委員会第四回全体会議(四中全会)は、「法治」を謳った。今更ながらにその実行力が問われている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
【移民レポート7】インド:世界最大の移民送出国
出稼ぎ労働者からIT技術者まで
2014年11月20日
-
【移民レポート9】フィリピン:海外送金のメリットとコスト
消費拡大VS人材流出
2014年11月20日
-
【移民レポート9】フィリピン:海外送金のメリットとコスト
消費拡大VS人材流出
2014年11月20日
-
【移民レポート6】オーストラリア:多文化主義国家の移民政策
時代に応じた制度改正で移民受け入れ成功例に
2014年11月19日
-
【移民レポート5】カナダ:移民受け入れ先進国が直面する問題
移民は経済・人口問題を解決できるか
2014年11月19日
-
【移民レポート4】英国:過去10年の移民急増が悩みの種
移民反対を掲げるUKIP(英国独立党)が躍進
2014年11月18日
-
【移民レポート3】ドイツ:移民政策転換から15年
高技能移民の積極受け入れと長期居住者の社会適合は道半ば
2014年11月18日
-
【移民レポート2】米国:国際的なヒトのモビリティの中心地
卓越した人材獲得競争力
2014年11月18日
-
【移民レポート1】日本の移民問題を考える
海外の事例を踏まえて
2014年11月17日
同じカテゴリの最新レポート
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 何故、わが国では潜在成長率が低迷しているのか?
高市政権は成長戦略を強化する方針だが、①労働、②資本、③TFP(全要素生産性)という3つの要素をバランス良く底上げする必要
2026年05月13日
-
2026年1-3月期GDP(1次速報)予測(改訂版)~前期比年率+2.9%に下方修正
直近公表の基礎統計を踏まえ、個人消費と外需をそれぞれ下方修正
2026年05月13日
-
過去最大となった機械受注残高、その背景と影響は?
受注機種の偏在などで機械投資に対する機械受注の先行性が低下
2026年05月13日
最新のレポート・コラム
-
米中首脳会談、余裕の中国と成果乏しい米国
トゥキディデスの罠、台湾問題、通商問題、イラン情勢
2026年05月18日
-
中国:自動車産業の内巻、国外では強みに
新エネルギー車(NEV)の急発展と自動車輸出の急増
2026年05月18日
-
上場オーナー企業と公開買付制度・大量保有報告制度の見直し
2026年5月1日に大量保有報告書等の提出義務が発生する場合も
2026年05月15日
-
デジタルアイデンティティ・デジタルクレデンシャルをめぐる取組みと実装技術の論点整理(第1部)
デジタルアイデンティティの基本像と、EUDIウォレットにみる制度化・実装動向
2026年05月14日
-
まちづくりと書いてチームビルディングと読む
2026年05月18日
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
いまさら人には聞けない 大量保有報告(5%ルール)のQ&A 【改訂版】
2024年金商法等改正法(2026年5月1日適用開始)を反映
2026年04月03日
-
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
-
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
-
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
いまさら人には聞けない 大量保有報告(5%ルール)のQ&A 【改訂版】
2024年金商法等改正法(2026年5月1日適用開始)を反映
2026年04月03日
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日

