【移民レポート2】米国:国際的なヒトのモビリティの中心地

卓越した人材獲得競争力

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2014年11月18日

  • 児玉 卓

サマリー

◆移民の主たる出身地域が、かつての欧州から中南米、そしてアジアへと移り行く中で、米国の文化、社会も不断の変容を迫られてきた。国際的な人のモビリティを高める強い求心力を発揮すると同時に、モビリティの高さが同国の変化の原動力ともなる。ここに、米国が移民大国と呼ばれる所以があろう。


◆近年の米国の移民政策の中心に位置付けられるのが、不法移民対策である。それは新たな不法移民の流入を抑制する国境管理の問題であり、更には既に1000万人を超える、すでに米国内に存在する不法移民にいかに対応するかという問題でもある。後者については、合法的滞在資格の付与が主要な対応策の一つに位置付けられている。不法移民の存在を前提とし、彼らをいかに米国社会に融合させるかという観点が制度設計に盛り込まれている。それは移民増加に伴う社会的コストの削減策という側面を持っており、こうした移民先進国の政策の在り方は、日本に多くの教訓を与える。問題は、現在の日本では「移民はいない」ことになっているため、こうした政策が採用される余地を自ら放棄していることだ。


◆高技能人材を優先的に受け入れる「選択的移民政策」を採用していることは、米国も他の主要先進国同様である。ただし、日本のように高技能人材は良いが、単純労働者は受け入れないという二分法は取っていない。労働力供給の不足が明らかな職種については明示的な外国人労働者の受け入れを行っている。また、典型的には在米インド人の所得稼得能力の高さが示すように、米国は高技能人材受け入れ政策が有効に機能している国とみなせよう。

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