サマリー
◆移民大国の一つであるカナダは、年間20万~25万人の移民(永住権取得者)を受け入れている。うち、カナダ経済に貢献することを目的とする「経済移民」が最多を占め、2013年は14.8万人となった。移民の出身地別では「アジア・大洋州」が全体の50%を占める他、国別では「中国」「フィリピン」「インド」出身の移民が多くなっている。近年、中国系の申請者が大多数を占めていた投資移民プログラムは、カナダ経済への貢献が低いことを理由に2014年に受け入れが停止されている。
◆一時滞在ビザの状況を見ると、2012年12月1日現在の滞在者は77万人で、内訳では、労働者(43.7%)、学生(34.3%)、その他難民などの人道目的(11.9%)となっており、カナダにおける就業と就学が主な滞在目的となっている。外国人労働者の出身国別では、2012年12月1日現在の滞在者で「フィリピン」「米国」「メキシコ」「インド」「フランス」の順となっている。特に、フィリピン人労働者の滞在者数は2007年以降急増している。
◆外国人労働者の受け入れを巡っては、2014年、大手ファストフードチェーンなど一部飲食業での低スキルワーカー就労の不正が問題となった。その後、受け入れ条件の厳格化や罰則が強化されたが、カナダ人雇用に対する努力義務"Putting Canadians First"が強化されるなど、国内での雇用確保とのバランスが課題となっている。
◆カナダの人口増加において、移民は大きな意味を持っており、2001年以降は移民が人口増加の主な要因となっている。カナダでは、高齢化の進展による社会保障費の増大と労働人口の減少が懸念されているが、移民がこうした人口問題、経済問題の解決となるかはカナダ国内でも議論が分かれている。移民受け入れ先進国であるカナダでも、正解を見つけられていない印象を受ける。
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