【移民レポート7】インド:世界最大の移民送出国
出稼ぎ労働者からIT技術者まで
サマリー
◆国連統計によれば、インドの海外移民数は1990年末時点では684.6万人であったが、2000年末には812万人、2013年末には1,416.7万人まで増加している。この数字は移民が多いことで知られるメキシコ(1,321.2万人)や中国(934.2万人)、フィリピン(548.7万人)などを上回り、国・地域別でトップである。
◆在外インド人を大きく分類すると、①IT等の高度な技能を持ち、米国や英国、カナダといった英語圏に移住した者、②サウジアラビアやUAEといった中東の産油国で出稼ぎ中の者、③スリランカや南アフリカ、モーリシャスといった旧英国植民地の移民の2世・3世、である。
◆在外インド人の総資産は1兆米ドル規模(うち半数は金融資産)だと言われている。インド政府はこれを本国の成長に結び付けるため、在外インド人向けの銀行口座を作るなどさまざまな政策を実施している。
◆インドでは、教育レベルの高い優秀な人材が他国(特に米国や英国といった英語圏)に移住してしまう「頭脳流出」が問題となっている。原因としては、①インドと先進国間の所得格差、②インド人労働者の高い国際競争力、③インド国内における高い能力を活かせる機会の不足、などが指摘できる。一方、一度国外に移住した高技能人材が帰国する等の形で「頭脳還流」が起きるケースもある。
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