サマリー
◆欧米諸国と比較した日本の外国人受け入れ実績が大きく遅れていることは確かだが、在留外国人は200万人を数え、その内3割は永住者である。政府は「単純労働者は受け入れない」という建前を維持したまま、建設業等への外国人材受け入れ積極化を検討するなどしているが、制度矛盾を温存したままのなし崩し的な受け入れ拡大はいずれ限界に直面しよう。客観的な事実を踏まえた、あるべき外国人受け入れ政策の議論を始めるときである。
◆欧米などの「移民先進国」においても、外国人受け入れは賛否の対立が先鋭化しやすい分野であり、「多文化共生」の困難を示す事例には事欠かない。こうした事例も、日本が外国人受け入れ政策の議論を開始することの重要性を高めるものである。例えば、ドイツにおける移民にかかわる社会問題は、同国が長く移民問題に向き合うことを避けてきたことに起因している。政策不在が、移民や外国人労働者にかかわる社会問題を惹起、深刻化させる可能性があるということであり、日本はこうした諸外国の経験に十分学ばなければならない。
◆高度人材については先進国間で獲得競争が繰り広げられている。こうした競争の帰結の内、最も危惧されるのは、医師や看護師、教師などの人材流出を通じて、送り出し国の社会インフラが劣化し、その人材供給能力が毀損されることである。このような事態を回避するには、受け入れ側である先進国が送り出し国の人材育成を自らの課題として受け止め、教育支援を拡充させることが必要である。人材獲得競争力に欠如した日本であれば尚のこと、「呼び込む前に育てる」政策の推進は必須であろう。
◆また、アジア諸国との良好な関係を構築・維持することも重要である。日本が受け入れる外国人労働者、(事実上の)移民のアジア依存度の高さは将来的にも不変であろう。一方、アジア諸国では日本に遅れて、今後少子化が急速に進み、特に若年層の受け入れ環境は着実に厳しさが増すことになろう。アジア諸国との良好な関係の構築・維持を含め人材獲得競争力の強化の重要性は高まるばかりである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
【移民レポート9】フィリピン:海外送金のメリットとコスト
消費拡大VS人材流出
2014年11月20日
-
【移民レポート8】中国:注目される投資移民と深刻な裸官問題
海外逃亡を図る腐敗幹部
2014年11月20日
-
【移民レポート7】インド:世界最大の移民送出国
出稼ぎ労働者からIT技術者まで
2014年11月20日
-
【移民レポート6】オーストラリア:多文化主義国家の移民政策
時代に応じた制度改正で移民受け入れ成功例に
2014年11月19日
-
【移民レポート5】カナダ:移民受け入れ先進国が直面する問題
移民は経済・人口問題を解決できるか
2014年11月19日
-
【移民レポート4】英国:過去10年の移民急増が悩みの種
移民反対を掲げるUKIP(英国独立党)が躍進
2014年11月18日
-
【移民レポート3】ドイツ:移民政策転換から15年
高技能移民の積極受け入れと長期居住者の社会適合は道半ば
2014年11月18日
-
【移民レポート2】米国:国際的なヒトのモビリティの中心地
卓越した人材獲得競争力
2014年11月18日
同じカテゴリの最新レポート
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 何故、わが国では潜在成長率が低迷しているのか?
高市政権は成長戦略を強化する方針だが、①労働、②資本、③TFP(全要素生産性)という3つの要素をバランス良く底上げする必要
2026年05月13日
-
2026年1-3月期GDP(1次速報)予測(改訂版)~前期比年率+2.9%に下方修正
直近公表の基礎統計を踏まえ、個人消費と外需をそれぞれ下方修正
2026年05月13日
-
過去最大となった機械受注残高、その背景と影響は?
受注機種の偏在などで機械投資に対する機械受注の先行性が低下
2026年05月13日
最新のレポート・コラム
-
上場オーナー企業と公開買付制度・大量保有報告制度の見直し
2026年5月1日に大量保有報告書等の提出義務が発生する場合も
2026年05月15日
-
デジタルアイデンティティ・デジタルクレデンシャルをめぐる取組みと実装技術の論点整理(第1部)
デジタルアイデンティティの基本像と、EUDIウォレットにみる制度化・実装動向
2026年05月14日
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 何故、わが国では潜在成長率が低迷しているのか?
高市政権は成長戦略を強化する方針だが、①労働、②資本、③TFP(全要素生産性)という3つの要素をバランス良く底上げする必要
2026年05月13日
-
AIが変える議決権行使助言業
中立性・客観性確保のための利用を訴求へ
2026年05月13日
-
中東リスクがASEAN進出企業に与える影響の差は、どのように生じているか?
2026年05月15日
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
いまさら人には聞けない 大量保有報告(5%ルール)のQ&A 【改訂版】
2024年金商法等改正法(2026年5月1日適用開始)を反映
2026年04月03日
-
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
-
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
-
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
いまさら人には聞けない 大量保有報告(5%ルール)のQ&A 【改訂版】
2024年金商法等改正法(2026年5月1日適用開始)を反映
2026年04月03日
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日

