【移民レポート1】日本の移民問題を考える

海外の事例を踏まえて

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2014年11月17日

  • 児玉 卓

サマリー

◆欧米諸国と比較した日本の外国人受け入れ実績が大きく遅れていることは確かだが、在留外国人は200万人を数え、その内3割は永住者である。政府は「単純労働者は受け入れない」という建前を維持したまま、建設業等への外国人材受け入れ積極化を検討するなどしているが、制度矛盾を温存したままのなし崩し的な受け入れ拡大はいずれ限界に直面しよう。客観的な事実を踏まえた、あるべき外国人受け入れ政策の議論を始めるときである。


◆欧米などの「移民先進国」においても、外国人受け入れは賛否の対立が先鋭化しやすい分野であり、「多文化共生」の困難を示す事例には事欠かない。こうした事例も、日本が外国人受け入れ政策の議論を開始することの重要性を高めるものである。例えば、ドイツにおける移民にかかわる社会問題は、同国が長く移民問題に向き合うことを避けてきたことに起因している。政策不在が、移民や外国人労働者にかかわる社会問題を惹起、深刻化させる可能性があるということであり、日本はこうした諸外国の経験に十分学ばなければならない。


◆高度人材については先進国間で獲得競争が繰り広げられている。こうした競争の帰結の内、最も危惧されるのは、医師や看護師、教師などの人材流出を通じて、送り出し国の社会インフラが劣化し、その人材供給能力が毀損されることである。このような事態を回避するには、受け入れ側である先進国が送り出し国の人材育成を自らの課題として受け止め、教育支援を拡充させることが必要である。人材獲得競争力に欠如した日本であれば尚のこと、「呼び込む前に育てる」政策の推進は必須であろう。


◆また、アジア諸国との良好な関係を構築・維持することも重要である。日本が受け入れる外国人労働者、(事実上の)移民のアジア依存度の高さは将来的にも不変であろう。一方、アジア諸国では日本に遅れて、今後少子化が急速に進み、特に若年層の受け入れ環境は着実に厳しさが増すことになろう。アジア諸国との良好な関係の構築・維持を含め人材獲得競争力の強化の重要性は高まるばかりである。

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