欧州経済見通し トランプリスク再来

追加関税で対米貿易摩擦懸念が再燃/欧州経済中期見通し

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2026年01月21日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆ユーロ圏経済の拡大を後押しする要因として期待されるドイツの財政拡張に関して、2025年後半に入ってようやくその効果が見られ始めた。ドイツの製造業受注数量は11月に前月比+5.6%と大幅に増加し、2022年6月以来の高水準となったほか、12月の建設業PMIは2022年3月以来初めて、基準となる50%を上回った。ドイツの財政支出が実行段階へと入ったことが示唆され、ユーロ圏経済の先行きを見通す上で大きな好材料である。

◆他方、ユーロ圏経済を取り巻く悪材料として、対米関係の再悪化が急浮上している。トランプ大統領はグリーンランド領有を巡って、欧州8ヵ国に対して追加関税を課す意向を明らかにした。EUと米国の交渉によって、追加関税が撤回される可能性は残されるものの、政策を巡る先行きの不確実性の高まりは、ユーロ圏経済にとってネガティブに働く公算が大きい。

◆今回のレポートでは、通常の経済見通しに加えて、ユーロ圏、英国の今後10年間(2026年~2035年)の中期経済見通しを改訂した。ユーロ圏経済の今後10年間の経済成長率は平均で+1.2%と予想する。ユーロ圏経済は自律的な成長経路へと復しつつあることに加え、予測期間前半は国防費を中心とした財政拡張が景気拡大を後押しすると見込まれる。財政による需要の押し上げ効果は低減していくことになるが、公共投資の拡大が供給面から成長力を押し上げる効果は、予測期間後半にも持続する見通しである。

◆英国の今後10年間の経済成長率は平均で+1.3%と予想する。労働党政権は大きな政府を志向しつつも財政規律を重視しており、財政による景気の押し上げは期待できない。政権の支持率は低迷しており、2029年までに行われる次回の総選挙で再度政権交代が起こる可能性に加え、ハング・パーラメントとなって政策運営が停滞するリスクにも注意が必要である。

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