欧州経済見通し 追加関税の影響が顕在化

米国向け輸出が急減、対米通商交渉の行方は依然不透明

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2025年06月24日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆2025年1-3月期は米国の追加関税実施前の駆け込み需要がユーロ圏経済を押し上げた一方、4月に入ってその反動減が顕在化している。4月の米国向け輸出は大幅に減少し、これが鉱工業生産の低下にも繋がった。4月の米国向け輸出は、平時並みの水準まで減少しているが、2025年3月までの急増分が需要の先食いであったとすれば、米国向け輸出はもう一段減少してもおかしくない。4月の減少を以て輸出の落ち込みが一巡したと判断するのは早計だろう。

◆ユーロ圏経済にとって最大のリスク要因である米国との通商交渉については、上乗せ税率の一時停止の期限である7月9日が迫っているものの、目立った進展は伝えられていない。EUは上乗せ税率が回避されたとしても、実施済みの鉄鋼・アルミニウム製品関税や自動車関税、10%の基礎税率に対して報復措置を取る可能性は残されており、引き続き交渉の行方は予断を許さない。

◆米国向け輸出の反動減が景気の下押し要因となったことは英国もユーロ圏と同様である。ただし、英国は既に米国と通商交渉で合意に至っており、その一部の実施についても正式に決定された。外需面でのリスクは他国に比べて相対的に低い。他方、内需面で労働市場が軟化しつつあり、個人消費の下振れリスクが高まっていることには注意が必要である。

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