サマリー
◆2025年1-3月期は米国の追加関税実施前の駆け込み需要がユーロ圏経済を押し上げた一方、4月に入ってその反動減が顕在化している。4月の米国向け輸出は大幅に減少し、これが鉱工業生産の低下にも繋がった。4月の米国向け輸出は、平時並みの水準まで減少しているが、2025年3月までの急増分が需要の先食いであったとすれば、米国向け輸出はもう一段減少してもおかしくない。4月の減少を以て輸出の落ち込みが一巡したと判断するのは早計だろう。
◆ユーロ圏経済にとって最大のリスク要因である米国との通商交渉については、上乗せ税率の一時停止の期限である7月9日が迫っているものの、目立った進展は伝えられていない。EUは上乗せ税率が回避されたとしても、実施済みの鉄鋼・アルミニウム製品関税や自動車関税、10%の基礎税率に対して報復措置を取る可能性は残されており、引き続き交渉の行方は予断を許さない。
◆米国向け輸出の反動減が景気の下押し要因となったことは英国もユーロ圏と同様である。ただし、英国は既に米国と通商交渉で合意に至っており、その一部の実施についても正式に決定された。外需面でのリスクは他国に比べて相対的に低い。他方、内需面で労働市場が軟化しつつあり、個人消費の下振れリスクが高まっていることには注意が必要である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
7-9月期ユーロ圏GDP 緩やかな成長が継続
フランスの成長ペースが加速し、市場予想からはわずかに上振れ
2025年10月31日
-
欧州経済見通し フランスの政治不安は一服
ただし予断は許されず、予算協議が次の焦点
2025年10月21日
-
欧州経済見通し 利下げ終了後の注目点
関税リスクは後退、財政悪化・金利上昇が新たなリスクに
2025年09月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日

