サマリー
◆ユーロ圏の2024年7-9月期の実質GDP成長率(速報値)は、前期比+0.4%(前期比年率+1.5%)となり、2022年7-9月期以来の高い伸びとなった。市場予想(Bloomberg調査:前期比+0.2%)では前期並みの成長が見込まれていたが、これに反して成長ペースは加速し、ユーロ圏経済の底堅さを示す結果であった。需要項目別の動向が既に公表されているフランス、スペインの結果などを総合すると、個人消費の増加がGDPの主な押し上げ要因になったとみられる。
◆国別の動向を見ると、成長率が公表された10ヵ国のうち、8ヵ国がプラス成長、1ヵ国が横ばい、1ヵ国がマイナス成長となった。成長率は、アイルランドが前期比+2.0%と最も高く、これに次いでリトアニアが同+1.1%、スペインが同+0.8%と好調だった。
◆成長率の加速という点に注目すると、4-6月期にマイナス成長だったドイツが前期比+0.2%と2四半期ぶりのプラス成長に転じたこと、フランスが同+0.4%と加速したことの影響が大きい。ドイツ、フランスともに市場予想(ドイツ:同▲0.1%、フランス:同+0.2%)から上振れした形だが、特にドイツがプラス成長に転じ、テクニカルリセッション(2四半期連続のマイナス成長)を回避したことは、大きなサプライズだった。
◆7-9月期のユーロ圏のGDPは前期から加速し、想定以上に堅調な結果となったが、10-12月期には再び成長ペースが鈍化する可能性が高まっている。10月の景況感指数(総合、欧州委員会発表)は、前月差▲0.7ptと2ヵ月連続で低下し95.6となった。この水準は、7-9月期平均の96.2を下回るのみならず、4-6月期平均(96.0)、1-3月期平均(96.0)も下回っている。製造業の停滞が足を引っ張るという構図は足元でも変わっておらず、ユーロ圏経済はあくまで緩やかな景気拡大が続くと見込まれる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 利下げ終了後の注目点
関税リスクは後退、財政悪化・金利上昇が新たなリスクに
2025年09月24日
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日