サマリー
◆2022年7-9月期のユーロ圏経済はプラス成長を維持したものの、ユーロ導入国の約3分の1がマイナス成長になった。ユーロ圏を取り巻く環境は混沌としており、年末から2023年初めにかけてマイナス成長に陥る可能性が高まっている。
◆引き続き、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が重しになっている。エネルギーや食料品等の価格高騰は個人消費の足を引っ張り、エネルギー供給への懸念は企業景況感や消費者マインドを押し下げ、先行きへの不透明感が企業や家計に慎重な支出行動を強いている。
◆温暖な冬はエネルギー需給の逼迫を緩和させ、ポジティブな要因だが、天候次第という不確実性を払拭できない。高インフレに対処するため、ECBは政策金利を大幅に引き上げてきたが、インフレ率はECBの想定を上回っており、2023年春まで利上げは続くだろう。
◆長短金利の上昇傾向は、住宅ローンを組む家計や事業資金を調達する企業だけでなく、歳出が膨らむ政府の借入コストを増やす。域内における財政余裕度・信用力の格差拡大は、各国の足並みの乱れにつながる恐れがある。
◆ユーロ圏よりも一足早くマイナス成長に陥った英国は、インフレ・経済見通しともに大陸欧州よりも厳しい。その一因は金融市場の混乱を引き起こした自業自得の要素が強いが、新政権が示した緊縮財政政策がうまくいくかは依然として不透明である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 利下げ終了後の注目点
関税リスクは後退、財政悪化・金利上昇が新たなリスクに
2025年09月24日
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日