サマリー
◆ドイツで9月24日の議会選挙を受けた連立政権交渉が難航している。メルケル首相率いるCDU(キリスト教民主同盟)/CSU(キリスト教社会同盟)と、FDP(自由民主党)、緑の党による連立政権(通称:ジャマイカ連立)の樹立に向けた予備協議は、FDPの離脱により11月19日に決裂した。
◆メルケル首相に残された選択肢は、(1)SPD(社会民主党)との大連立政権、(2)CDU/CSUとFDP、またはCDU/CSUと緑の党の少数与党政権、(3)再選挙で、本命は大連立政権の続投である。SPDは選挙での大敗を理由にこれを断固拒否するとしてきたが、ドイツに安定した政権の誕生を望む国内外からの声に押され、協議に応じる姿勢に転じた。
◆EU最大の経済規模を有し、フランスと共に欧州統合を推進してきたドイツで不安定な政権が誕生すれば、英国のEU離脱交渉、EU改革、ギリシャ支援問題などさまざまな課題に直面しているEUにも悪影響が及ぶと懸念される。ジャマイカ連立の協議決裂後もユーロ安、株安、金利上昇といった反応は起きていないが、これはドイツの政治混乱が拡大せず、好調な景気にも悪影響は生じないと予想されているためだろう。
◆大連立政権樹立に向けた協議は一筋縄ではいかないだろうが、国内外から要請されている「安定政権樹立」のためにCDU/CSUとSPDがそれぞれ歩み寄ることになると予想する。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 成長再加速の兆し
景気の下振れリスク緩和でECBの追加利下げ観測は後退
2025年11月25日
-
7-9月期ユーロ圏GDP 緩やかな成長が継続
フランスの成長ペースが加速し、市場予想からはわずかに上振れ
2025年10月31日
-
欧州経済見通し フランスの政治不安は一服
ただし予断は許されず、予算協議が次の焦点
2025年10月21日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

