サマリー
◆ユーロ圏では堅調な景気拡大が継続すると見込まれる。8月の鉱工業生産は資本財と中間財を中心に大幅に拡大し、投資回復の進展を示唆している。一方、8月の小売売上高と9月の新車販売は減速したが、良好な雇用情勢と低インフレを背景に消費者信頼感は高水準にあり、減速は一時的と考えられる。また、企業景況感も9月にかけて一段と改善している。ユーロ高や中国の景気減速による輸出の伸び鈍化が予想されるが、ユーロ圏の成長率は2017年+2.2%、2018年は+1.8%を達成できると見込む。なお、ECB(欧州中央銀行)は10月26日の理事会後に、2018年1月以降の資産買取の縮小計画を公表する見込みだが、「非伝統的な」緩和策の修正を慎重に進める方針であり、マイナス金利のマイナス幅縮小を含む低金利政策の変更は2018年半ば以降になるだろう。
◆英国の9月の消費者物価上昇率は前年比+3.0%と、BOE(英中銀)のインフレ・ターゲットの上限に達した。カーニーBOE総裁は利上げに意欲を示しており、11月2日の金融政策理事会で政策金利を0.25%から0.50%へ引き上げる可能性が高まっている。英国経済は減速したものの景気後退に陥っているわけではなく、就業者増を背景に小売売上高はこの夏場に持ち直しの兆しを見せている。ただし、消費者や企業の景況感は冴えず、また住宅販売業者の景況感は悪化している。インフレ率の加速は利上げの根拠となるが、過去の利上げ局面に比べBOEが性急であるとの印象が拭えない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 追加関税の影響が顕在化
米国向け輸出が急減、対米通商交渉の行方は依然不透明
2025年06月24日
-
欧州経済見通し 対米通商交渉に一喜一憂
米英合意、米中間の関税引き下げは朗報、EUの交渉は楽観視できず
2025年05月23日
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日