保険会社にも国際的に統一した資本規制の波
オオカミはくるのか?
2013年10月22日
サマリー
◆2013年10月9日、日米欧など約140カ国・地域の金融監督当局で構成される保険監督者国際機構(IAIS:International Association of Insurance Supervisors)は、国際的に活動する保険グループ(IAIGs:Internationally Active Insurance Groups)の経営健全性を確保するため、リスクベースのグローバルに統一された資本基準(ICS: Insurance Capital Standard)を新たに策定することを発表した。策定期限となる2016年以降、監督当局とIAIGsによるテストや微調整を経て、全面的な導入が2019年に予定されている。
◆今回の新たに発表されたICSの枠組みは、IAISが2010年よりIAIGsを対象として策定していた、「国際的に活動する保険会社グループを対象とした、共通の保険監督枠組み(Common Frame、通称ComFrame)」の中に含まれることとなった。資本規制の対象となるIAIGsの選定には、監督当局にある程度の裁量余地が付与され約50社程度に絞られるものとしている。ただしICSの概要や、現在の各国の資本規制(EUのソルベンシーⅡ等)と比較してどのようになるかは全くの白紙の段階といえる。
◆保険業界の世界的なシンクタンクであるジュネーブ協会は、IAISが発表した導入までの時間枠の短さについては否定的な見解を示している。これまでの経緯でもIAISは国際的に統一した資本規制に関しては消極的なスタンスを示していただけに、具体的な規制部分が未着手の現段階で、2019年までに予定しているスケジュールが順調に進むかは懐疑的といえる。各国のソルベンシーⅡの導入も難航し、大幅に遅れている現状を鑑みると、実施するとの掛け声にとどまることなく、AIG問題の教訓を国際統一規制の形に変える悲願の早期達成に期待したい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2022年05月20日
2022年4月全国消費者物価
携帯電話通信料引き下げの影響が縮小しコアCPIは前年比+2.1%に
-
2022年05月20日
内外経済とマーケットの注目点(2022/5/20)
米国の個人消費は底堅いとみられるが、日米企業の収益環境に要注意
-
2022年05月19日
2022年3月機械受注
大型案件が押し上げも基調は足踏み継続
-
2022年05月19日
ファイアーウォール規制に関する内閣府令等の改正
上場企業等に関する情報共有規制を緩和
-
2022年05月23日
「出勤者数の削減」をミクロ経済学的に考える
よく読まれているリサーチレポート
-
2022年03月22日
日本経済見通し:2022年3月
ウクライナ情勢の緊迫化による日本・主要国経済への影響
-
2022年01月24日
円安は日本経済にとって「プラス」なのか「マイナス」なのか?
プラスの効果をもたらすが、以前に比べ効果は縮小
-
2022年03月23日
ロシアのウクライナ侵攻で一気に不透明感が増した世界経済
-
2022年02月10日
ロシアによるウクライナ侵攻の裏側にあるもの
ゼレンスキー・ウクライナ大統領の誤算
-
2022年03月17日
FOMC 想定通り、0.25%ptの利上げを決定
ドットチャートは2022-24年にかけて、計10.5回分の利上げを予想