ポルトガルの政治危機の背景に経済危機

スペイン、イタリアに波及するかが焦点

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2013年07月04日

サマリー

◆ポルトガルの連立政権が瓦解の危機に直面している。同国はこれまでEU/IMFの支援下で財政健全化を粛々と進めてきたが、その推進役であった財務相が辞任。次いで、連立与党のうち小党の民衆党党首でもある外相が辞意を表明した。この事態にポルトガル国債利回りは急上昇し、株価は急落した。


◆今回の政治危機の背景には、緊縮財政政策を巡る意見対立があったとされる。財務相は緊縮財政政策に十分な支持を得られなくなったことを辞任の理由とした。これに対して外相は、財務相の辞任を機に政策方針を財政健全化から景気対策重視に変更させようとの意図があったものの、それを阻まれての辞意表明だったとされる。


◆議会解散権を持つ大統領が主要政党の党首と会談して事態の収拾を図っているが、解散・総選挙となる可能性もある。野党を中心とする新政権が誕生しても、ポルトガル政府がEUからの支援を危うくする財政健全化政策の放棄を選択する可能性はまずないだろう。ただし、緊縮財政政策が景気悪化をもたらし、その後、景気回復の糸口が見えていないのは、スペイン、イタリアも同様の構図である。欧州経済の唯一の牽引役である外需の回復が期待外れとなっている状況下で、スペイン、イタリアに市場の不安が伝播しないか注意が必要である。

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