サマリー
◆ポルトガルの連立政権が瓦解の危機に直面している。同国はこれまでEU/IMFの支援下で財政健全化を粛々と進めてきたが、その推進役であった財務相が辞任。次いで、連立与党のうち小党の民衆党党首でもある外相が辞意を表明した。この事態にポルトガル国債利回りは急上昇し、株価は急落した。
◆今回の政治危機の背景には、緊縮財政政策を巡る意見対立があったとされる。財務相は緊縮財政政策に十分な支持を得られなくなったことを辞任の理由とした。これに対して外相は、財務相の辞任を機に政策方針を財政健全化から景気対策重視に変更させようとの意図があったものの、それを阻まれての辞意表明だったとされる。
◆議会解散権を持つ大統領が主要政党の党首と会談して事態の収拾を図っているが、解散・総選挙となる可能性もある。野党を中心とする新政権が誕生しても、ポルトガル政府がEUからの支援を危うくする財政健全化政策の放棄を選択する可能性はまずないだろう。ただし、緊縮財政政策が景気悪化をもたらし、その後、景気回復の糸口が見えていないのは、スペイン、イタリアも同様の構図である。欧州経済の唯一の牽引役である外需の回復が期待外れとなっている状況下で、スペイン、イタリアに市場の不安が伝播しないか注意が必要である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
欧州経済見通し 輸出環境が一段と悪化
米国の追加関税率は30%に引き上げへ、ユーロ高も輸出の重荷に
2025年07月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日