サマリー
◆2025年4月2日にトランプ米大統領が発表した相互関税率は、アジア新興国が想定していたよりも高い水準であった(同9日、トランプ大統領は中国を除く国・地域を対象に相互関税の上乗せ部分を90日間停止すると発表)。本稿では、一連のトランプ関税がアジア新興国の輸出産業に及ぼす影響と、各国の耐性について分析する。
◆相互関税の影響をセクターごとに見ると、衣類や履物といった労働集約型製品に関しては、メキシコ産品との価格競争に晒されるおそれがある。他方、電子機器に関しては、アジアのコスト優位性が大きく損なわれ、サプライチェーンの本格的な再構築が生じるとは考えにくい。リスクとしてはむしろ、一連のトランプ関税が米国内需の収縮を引き起こし、それが世界経済の減速を誘発する場合だろう。
◆ファンダメンタルズを確認すると、民間消費は各国とも概ね堅調に推移している。また、対外債務や経常収支、外貨準備などの水準を見ても、各国とも外部環境の変化に対する耐性は十分である。相互関税の発動が、ただちに経済の大幅な悪化につながるとは考えにくい。現時点で、比較的注意を要するのはインドネシアである。2025年に入ってから、消費に弱さがみられることや、巨額の財政出動を伴うプラボウォ大統領の公約が、同国の財政悪化懸念につながり、資本流出の要因となっているためである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
なぜベトナムは「不平等協定」を結ぶのか
米国・ベトナムの「ディール」を解明する
2025年08月14日
-
米国抜きの連携拡大~CPTPPのEU拡大が意味すること
「反米色」を排除しながら自由貿易の枠組みを強化、アジアに恩恵も
2025年07月23日
-
インド経済は堅調か?2025年度Q2以降の見通し
個人消費とインフラ投資がけん引役。利下げが都市部の消費を刺激へ
2025年07月07日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日