サマリー
◆2023年度のインドは、好調な内需が高成長を支えている。旺盛な内需の背景には、①2024年5月に実施される総選挙を前に、政府がインフラ投資を積極的に行っていること、②雇用環境の改善や企業業績の拡大、インフレの抑制、銀行借入の増加によって、民間消費が増加していること、③原材料コストの低下や民間消費の回復を背景に、民間投資が増加する好循環が生じていること、の3点が挙げられる。2023年度は前年比+7.0%成長も可能だろう。
◆2024年度も、旺盛な消費が民間投資を誘発するほか、生産連動型インセンティブ(PLI)スキームを活用した投資も本格化することで、高成長率を維持できるだろう。ただし、2024年5月までに総選挙が終わり、インフラ投資が一段落するとみられるため、2024年度の成長率は+6.5%程度と前年度から若干減速するだろう。
◆2024年の総選挙では、現与党であるインド人民党(BJP)が議席の過半数を獲得するとの見方が大勢である。モディ首相の続投は、金融市場への影響や国際社会との関係においてポジティブだろう。次期政権は、人口ボーナス期に、その効果を顕在化させるような環境を整備して一人当たりGDPを引き上げる必要がある。端的には製造業を拡大させることで、雇用機会を増やし、家計の所得を増加させることが急務である。家計の貯蓄率が高まれば、それを原資とした投資が増加し、インドの潜在成長率を底上げするだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
なぜベトナムは「不平等協定」を結ぶのか
米国・ベトナムの「ディール」を解明する
2025年08月14日
-
米国抜きの連携拡大~CPTPPのEU拡大が意味すること
「反米色」を排除しながら自由貿易の枠組みを強化、アジアに恩恵も
2025年07月23日
-
インド経済は堅調か?2025年度Q2以降の見通し
個人消費とインフラ投資がけん引役。利下げが都市部の消費を刺激へ
2025年07月07日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日