サマリー
◆新興国の多くは、ロシアによるウクライナ侵攻以前から物価高に直面してきた。今般のコモディティー価格上昇は、それに拍車をかける可能性がある。本稿では、ウクライナ情勢緊迫化以前の各国の物価動向をまとめた後、燃料、非鉄金属・鉱石、食品価格の上昇が各国に与える影響を概観した。
◆2021年10月-2022年1月の指標に注目すると、東南アジア諸国が物価のコントロールに概ね成功していたのに対し、トルコ、ブラジル、ロシア、南アフリカ(南ア)、メキシコ、インドといった主要新興国ではインフレが進んだ。共通して見られたのはエネルギー価格の上昇であったが、トルコ、ブラジル、ロシア、メキシコでは食品価格や、それ以外の幅広い品目にインフレ圧力が波及した。これを受けて、ブラジル、ロシア、メキシコは追加利上げを実施したほか、南アはコロナ禍後で初の利上げを実施し、金融緩和路線の修正を図った。
◆各国の貿易統計を基に、原油、石油製品、天然ガス、非鉄金属・鉱石、穀物の純輸出額を合計したところ、南ア、ブラジル、マレーシアではプラスとなった。これらの国々では、今般のコモディティー価格上昇が、国内物価を大きく押し上げる可能性は限定的である。他方で、これらコモディティーの純輸入規模が大きいのが、タイ、トルコ、インド、フィリピンである。コモディティー価格の上昇が長期に亘って続くほど、国内のインフレが進む可能性がある。この4カ国は、経常収支と財政収支の赤字、いわゆる双子の赤字を抱えており、自国通貨の為替レートの下落が輸入物価を一段と押し上げるリスクに注意が必要だろう。
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