サマリー
◆ここ数年、タイの輸出額は頭打ちにある。米国経済の回復が見られ始めた後も、力強い回復は見られない。世界的なバリューチェーン(GVC)の中において、タイの輸出活性化に何が求められているのか。
◆タイは従来、GVCの中で加工貿易拠点として発展し、輸出・輸入を先進国に依存してきた。しかし2000年以降、タイは中間財や最終財を介し、先進国よりも中国やASEANとの統合を深化させている。特に、対中国では「技術力」の相対的な優位を背景とした機械類輸出が伸びている。GVCにおけるタイの役割は、中間財を輸入し、安い賃金を背景に組み立て、最終財を輸出するものから、技術力を以て中国を補完するものに変化しつつあるようだ。
◆しかし、近年タイの中国に対する生産性の優位は低下しつつある。その一方で、賃金上昇が単位労働コストを押し上げている。タイがGVCの中で競争力を保つためには、技術力による生産性向上に注力すべきである。特に、民間部門によるR&Dを促進することで、技術力を高める必要がある。また、より多くの労働力を生産性の低い低技術産業から、より生産性が高く高技術な産業に移行させる必要がある。その場合、非熟練労働については、ASEAN後進国の労働者受け入れを合法的に拡大することも一つの手だろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
インド:所得減税・GST改正の効果は?
GST税率引き下げは耐久財消費を喚起。企業投資につながるか注視
2025年11月14日
-
インドネシア:弱含む内需への対応策は?
雇用問題が消費者心理に影響。ヒト・モノへの投資バランス調整を
2025年11月13日
-
なぜベトナムは「不平等協定」を結ぶのか
米国・ベトナムの「ディール」を解明する
2025年08月14日
最新のレポート・コラム
-
消費データブック(2025/12/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年12月02日
-
「年収の壁」とされる課税最低限の引上げはどのように行うべきか
基礎控除の引上げよりも、給付付き税額控除が適切な方法
2025年12月02日
-
2025年7-9月期法人企業統計と2次QE予測
AI関連需要の高まりで大幅増益/2次QEでGDPは小幅の下方修正へ
2025年12月01日
-
「2030年に女性役員比率30%」に向けた課題
TOPIX500採用銘柄における現状、変化、業種別の傾向等の分析
2025年12月01日
-
なぜ今、ベトナム市場なのか:外国人投資家が注目する理由
2025年12月01日

