サマリー
◆中国経済の先行きへの不安や「質」への逃避を背景に、マネーストック統計に異変が起きている。M1を構成する預金通貨(要求払預金)が2024年2月以降、前年同月比で減少し、足元でそのマイナス幅が大きく拡大している。これは投資や消費のための資金需要の減退を示唆している可能性がある。一方、M2を構成する準通貨(貯蓄・定期預金など)は概ね10%以上の増加が続くなど、比較的堅調な推移となっている。
◆今後、中国政府は2024年の政府成長率目標である前年比5%成長を達成するために、さらなる金融緩和や財政出動などの措置を講じてくるだろう。しかし、根本的に重要なのは、不動産不況からの脱却だ。野放図な放漫経営により、経営危機に陥ったデベロッパーを処理する一方で、本来なら健全な経営をしていたにもかかわらず、中国版総量規制の導入→銀行の貸し渋り・貸し剥がし→工事中断→購入者が購入を敬遠→業績悪化→デフォルト、という経路で存続の危機に瀕しているデベロッパーを救済する必要がある。抜本的な政策が発動されなければ、中国経済の成長力低下の長期化が懸念されよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国経済見通し: 5%成長死守に向け内需を刺激
パワーアップした内需刺激策を発表。2025年は反動減に要注意
2024年08月22日
-
中国経済見通し: 5%成長目標の達成に黄信号
家計のバランスシート調整の影響もあり、消費が減速
2024年07月19日
-
中国:前例のない住宅市場テコ入れ策は不発か
5%成長に向けて、家電購入補助金支給など対症療法的な政策を総動員
2024年06月21日
-
中国:バランスシート調整とトランプ・リスク
家計は負債圧縮を優先、トランプ氏再選なら中国経済に打撃
2024年05月23日
-
中国経済見通し:名目<実質、実感なき景気堅調
不動産不況に一段の長期化の懸念
2024年04月25日
-
中国:スタートで躓く。不動産不況は一段と悪化
住宅市場の安定化に失敗すれば4.0%成長に
2024年03月22日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
日本経済見通し:2025年1月
2025~34年度における経済財政・金利・為替レートの中期見通し
2025年01月24日
-
2025年、インドの消費回復の行方は?
都市部中間層の消費回復がカギ。2/1発表予定の予算に期待
2025年01月23日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言方針改定
2025年以降の株主総会に適用する助言方針改定はほぼ既報の通り
2025年02月04日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
日本経済見通し:2025年1月
2025~34年度における経済財政・金利・為替レートの中期見通し
2025年01月24日
2025年、インドの消費回復の行方は?
都市部中間層の消費回復がカギ。2/1発表予定の予算に期待
2025年01月23日
グラス・ルイスの議決権行使助言方針改定
2025年以降の株主総会に適用する助言方針改定はほぼ既報の通り
2025年02月04日