サマリー
◆中国の全国人民代表大会(日本の国会に相当)常務委員会は、2023年10月~12月に国債を1兆元(約21兆円、GDP比0.8%)増発することを決定した。インフラ投資増強で成長率を押し上げる。中国国家統計局によると、2023年1月~9月の実質GDP成長率は前年同期比5.2%(以下、変化率は前年比、前年同期比)となり、10月~12月は4.4%で年間5.0%成長が可能となる計算だ。国債を増発しなくても政府目標は十分に達成可能であると思われるのに、なぜ増発に踏み切ったのであろうか。第二次コロナショック下の2022年は、政府成長率目標5.5%前後に対して、実績は3.0%にとどまった。これには、人々の生命を最優先し、「ゼロコロナ」政策を継続したという大義名分があった。しかし、「ウィズコロナ」政策に転換した2023年はそうはいかない。2023年の政府目標5.0%前後は必達であり、それを上回る着地が「政治的」に要請されているのであろう。習近平総書記の面子を立てる、これが国債増発の背景だ。
◆中国経済見通しに変更はない。2023年は5.4%程度、2024年は4.3%程度の実質成長となろう。2023年は政府成長率目標の5.0%前後を上回ると見ているが、これは2022年の低成長の反動によるところが大きく、景気が強いというわけではない。住宅開発を牽引役とした経済発展パターンは終わりを迎え、巡航速度といわれる成長率は数年前の5%台から4%台に低下した可能性が高い。
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