サマリー
◆中国国家統計局によると、2023年4月の失業率は5.2%に低下した。一方で、16歳~24歳の失業率は20.4%となり、統計の発表が始まった2018年1月以降の最高を記録した。今後の若年層の失業率改善には、景気回復に加え、雇用吸収力の大きい民営企業支援策を積極的に強化することが不可欠だ。例えば、民営企業向けの銀行貸出の伸び率が全体を数%ポイント上回るように、中国人民銀行が窓口指導を行うなど、実効性のある政策の実施が望まれる。
◆足元の景気回復ペースは鈍化している。小売売上は2023年3月の前年同月比10.6%増(以下、変化率は前年比、前年同期比、前年同月比)から4月は18.4%増に加速したが、これは前年同月が上海市ロックダウンなどによって大幅減となった反動によるところが大きい。2022年と2023年の伸び率の平均は3月が3.3%増、4月は2.6%増にとどまり、4月はむしろ減速している。固定資産投資は2022年の5.1%増から2023年1月~4月は4.7%増に減速した。1月~4月の所有形態別内訳は、民営企業が0.4%増、国有企業は9.4%増と、大きな差が維持されている。年後半の景気回復を確固としたものにするには民営企業への積極的なテコ入れが不可欠だ。
◆2023年と2024年の中国経済見通しに変更はない。2023年は5.9%程度、2024年は4.3%程度の実質成長を予想している。2023年の成長率予想をやや高めと感じる向きもあろうが、これは2022年が「ゼロコロナ」政策と不動産不況によって3.0%成長にとどまった反動によるところが大きい。大和総研の想定通りとなれば、2022年と2023年の平均は4.4%となる計算だ。中国経済の回復は力強さに欠けよう。
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