サマリー
◆中国国家統計局によると、2023年7月~9月の実質GDP成長率は前年同期比4.9%(以下、断りのない限り、変化率は前年比、前年同期比)となり、ブルームバーグ社集計の予想平均である4.5%を上回った。これを受けて、年間の成長率予測を引き上げるところが相次いだが、大和総研は元々やや強気にみていたこともあり、見通しは変更しない。2023年は5.4%程度となろう。2023年の政府成長率目標は5.0%前後であり、これを上回るとの見立てだ。
◆ただし、景気が強いというわけではない。2020年の第一次コロナショック下の実質成長率は2.2%、2021年は反動増もあり、8.4%成長を遂げ、2年間の平均は5.3%であった。一方、第二次コロナショック下の2022年は3.0%に減速し、2023年が大和総研の想定通り(5.4%)となった場合、2年間の平均は4.2%にとどまる計算だ。巡航速度といわれる成長率は数年前の5%台から4%台に低下した可能性が高い。大和総研は2024年の実質GDP成長率を4.3%程度と想定している。
◆習近平国家主席が提唱した「一帯一路」は10周年を迎え、2023年10月17日~18日に、北京市で国際フォーラムが開催された。中国の一帯一路参加国向けの輸出が全体に占める割合は2012年の34.8%から2022年は42.7%に、輸入は43.8%から49.0%に拡大した。ただし、これはASEANとロシアの寄与がほとんどである。中国の輸出は2012年~2022年の10年で年平均5.7%増、輸入は4.1%増となったが、一帯一路をテコに中国向け輸出(中国にとっての輸入)を加速しようと目論んでいた多くの一帯一路参加国とって、期待された成果は出ていないとみられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国版「失われた20年」の始まり?
人口減少・少子高齢化、総需要減少、過剰投資、過剰債務、国進民退
2023年09月21日
-
中国:最悪ケースは金融危機のトリガーに
「不動産不況」が深刻化、軟着陸の鍵は健全な民営デベロッパーの救済
2023年08月22日
-
中国:局面打開策は民営企業の強力テコ入れ
23年4~6月の中国経済、ロックダウンからの反動は小幅にとどまる
2023年07月20日
-
中国:利下げは景気テコ入れの号砲か?
日本の半導体製造装置の輸出管理強化とインバウンドの行方
2023年06月21日
-
中国経済見通し:変調?一時的減速?
若年層の高失業率とデフレ懸念。民営企業への積極的なテコ入れが鍵
2023年05月24日
-
中国経済見通し:リベンジ消費>不動産不況
1月~3月は4.5%成長。年間成長率予想を5.6%→5.9%に引き上げ
2023年04月20日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日