サマリー
◆日本が先端半導体製造装置23品目を対象に輸出管理を強化することに、中国は強く反発している。対抗措置が想定されるが、その因果関係が分かりにくいのが中国の特徴だ。2023年4月29日に日本の水際対策が全て終了してからも中国による日本への団体旅行が再開されないのはなぜだろうか。中国は決して認めないであろうが、今回の日本の輸出管理強化に対する不満や不快感が影響している可能性がある。筆者の読み違いであることを願うが、日本への団体旅行の解禁は政治マターとなり、さらに後ずれする懸念があろう。
◆足元の中国の景気回復は鈍い。こうした中、中国人民銀行は2023年6月20日、政策金利を0.1%pt引き下げた。これで経済が好転するとは考えにくいが、下半期の景気回復のための第一歩と位置付けられているのであろう。7月末には中国共産党政治局会議が開催され、上半期の経済実績の総括と下半期の経済政策の重点が決定されるとみられる。これを機に、あるいはその前にも景気テコ入れ策が発表される可能性が高い。その成否のカギを握るのは民営企業への「優遇」策の発動の有無である。民営企業向けの銀行貸出の伸び率が全体を上回るようにしたり、預金準備率引き下げの際に、増加した貸出余力の向け先の多くを民間企業にするよう、中国人民銀行が窓口指導を行うなど、実効性のある政策の実施が望まれる。不動産市場安定化の観点からは、財務の健全性の高い民営デベロッパーの資金調達の改善が喫緊の課題だ。こうした政策の発動がなければ、景気の本格回復は難しくなろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国経済見通し:変調?一時的減速?
若年層の高失業率とデフレ懸念。民営企業への積極的なテコ入れが鍵
2023年05月24日
-
中国経済見通し:リベンジ消費>不動産不況
1月~3月は4.5%成長。年間成長率予想を5.6%→5.9%に引き上げ
2023年04月20日
-
中国:李強・新首相下での中国経済の行方
曰く「5.0%前後」の実現は困難。ゆえに経済テコ入れ策を発表へ
2023年03月22日
-
中国:李強新首相はソフト路線?
経済・金融分野は安定・継続を重視
2023年03月14日
-
全人代も習一色、李克強氏の影響力は即排除
2023年の政府成長率目標は超過達成を前提に「5%前後」に設定
2023年03月06日
-
中国:習3期目政権、最初の全人代の注目点
2023年の政府成長率目標は超過達成を前提に「5%前後」か
2023年02月22日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日