サマリー
◆中国では「日本化」「日本病」をキーワードに、日本の「失われた20年」と中国経済の相違点を分析するレポートの発表が相次いだ。筆者は、中長期的に中国の成長率低下は不可避であり、いずれ長期低迷局面が訪れる可能性が高いとみている。これは、(1)人口減少と少子高齢化の急速な進展、(2)住宅需要の減退など総需要の減少、(3)過剰投資と投資効率の低下、(4)それと表裏一体の過剰債務問題、(5)「国進民退」とイノベーションの停滞、などの構造的な問題が中国の成長力を低下させるためである。
◆上記はいずれも構造的な問題であり、状況の改善は極めて難しい。こうした中、万能薬ではないが、処方箋のひとつとして挙げられるのは、「国進民退」からの脱却である。李克強前首相時代には、①中小企業向け貸出増加率が全体を大きく上回るようにする、②預金準備率引き下げにより増加した貸出余力について、多くを中小企業貸出に振り向けるように窓口指導を行う、といった政策を実施したことがある。中小企業の多くは民営企業である。民営企業の圧倒的なプレゼンスに鑑みれば、民営企業にこそ、手厚いサポートがなされるべきであろう。こうした政策を社会主義的な考え方が強い習近平3期目政権が打ち出すことができるのか。処方箋は明らかなのに実行できなければ、それこそが習近平一強体制の弊害ということになろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国:最悪ケースは金融危機のトリガーに
「不動産不況」が深刻化、軟着陸の鍵は健全な民営デベロッパーの救済
2023年08月22日
-
中国:局面打開策は民営企業の強力テコ入れ
23年4~6月の中国経済、ロックダウンからの反動は小幅にとどまる
2023年07月20日
-
中国:利下げは景気テコ入れの号砲か?
日本の半導体製造装置の輸出管理強化とインバウンドの行方
2023年06月21日
-
中国経済見通し:変調?一時的減速?
若年層の高失業率とデフレ懸念。民営企業への積極的なテコ入れが鍵
2023年05月24日
-
中国経済見通し:リベンジ消費>不動産不況
1月~3月は4.5%成長。年間成長率予想を5.6%→5.9%に引き上げ
2023年04月20日
-
中国:李強・新首相下での中国経済の行方
曰く「5.0%前後」の実現は困難。ゆえに経済テコ入れ策を発表へ
2023年03月22日
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:トランプ関税2.0で25年は3.9%成長へ
迂回輸出は当面温存。「トランプ関税2.0」の長期化は想定せず
2025年04月23日
-
中国:米国の対中追加関税率は累計104%→145%、中国経済への悪影響はほぼ変わらず
中国は交渉(ディール)の用意があることを示唆
2025年04月11日
-
中国:米国の104%追加関税、悪影響には天井
累計104%の追加関税で中国の実質GDPを2.84%押し下げ
2025年04月09日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日