中国版「失われた20年」の始まり?

人口減少・少子高齢化、総需要減少、過剰投資、過剰債務、国進民退

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2023年09月21日

サマリー

◆中国では「日本化」「日本病」をキーワードに、日本の「失われた20年」と中国経済の相違点を分析するレポートの発表が相次いだ。筆者は、中長期的に中国の成長率低下は不可避であり、いずれ長期低迷局面が訪れる可能性が高いとみている。これは、(1)人口減少と少子高齢化の急速な進展、(2)住宅需要の減退など総需要の減少、(3)過剰投資と投資効率の低下、(4)それと表裏一体の過剰債務問題、(5)「国進民退」とイノベーションの停滞、などの構造的な問題が中国の成長力を低下させるためである。

◆上記はいずれも構造的な問題であり、状況の改善は極めて難しい。こうした中、万能薬ではないが、処方箋のひとつとして挙げられるのは、「国進民退」からの脱却である。李克強前首相時代には、①中小企業向け貸出増加率が全体を大きく上回るようにする、②預金準備率引き下げにより増加した貸出余力について、多くを中小企業貸出に振り向けるように窓口指導を行う、といった政策を実施したことがある。中小企業の多くは民営企業である。民営企業の圧倒的なプレゼンスに鑑みれば、民営企業にこそ、手厚いサポートがなされるべきであろう。こうした政策を社会主義的な考え方が強い習近平3期目政権が打ち出すことができるのか。処方箋は明らかなのに実行できなければ、それこそが習近平一強体制の弊害ということになろう。

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