サマリー
◆2023年3月の第14期全国人民代表大会(全人代)第1回会議で李克強氏が引退し、李強氏が後任の首相に就任した。経済重視、開明派、国民生活への配慮、民営企業への思い入れといったキーワードから浮かび上がる李強氏の姿勢は、その穏やかな語り口とも相まって「ソフト路線」ということになるのではないだろうか。2023年は経済の再活性化が最優先課題であり、こうした状況において、李強氏の手腕に対する懸念が高まる場面は少ないであろう。問題は、経済が好転し、自信を取り戻した習近平氏が再び社会主義的な政策を強めた際に、ストッパーや調整役を李強氏が務めることが難しいことである。
◆全人代では、2023年の政府成長率目標を前年比5.0%前後(以下、変化率は前年比)と設定した。李強首相は記者会見で、「成長率目標の実現は決して容易ではなく、一層努力する必要がある」とした。恐らくこれは、「実現は容易ではないため積極的な景気テコ入れ策を講じて、目標を必ず達成する」と読み替えて差し支えないであろう。中国人民銀行は3月19日に、銀行の預金準備率を0.25%引き下げることを発表した。李強首相の経済回復を重視する姿勢に中央銀行が早速反応した格好である。2022年の中国経済は実質3.0%成長にとどまったが、2023年は5.6%程度の実質成長が可能であるとみている。
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