サマリー
◆第14期全国人民代表大会(全人代)第1回会議において、李克強氏の後任の首相に李強氏が就任した。首相として初めて臨んだ記者会見では、今後の重点として、①「人」を中心とした発展思想を強固に打ち立てる、②力を集中して質の高い発展を推進する、③「改革開放」の深化を堅持する、ことを掲げた。①では、人々の関心は、住宅、就業、収入、教育、医療、環境など、身近で具体的なことにあるとして、こうしたテーマを重視する考えを示した。国民の生活への配慮、経済重視といったキーワードから浮かび上がる李強氏の姿勢は、その語り口とも相まって「ソフト路線」ということになるのではないだろうか。習近平国家主席の強面ぶりとは対照的な印象を受けた。
◆2023年は経済の再活性化が最優先課題となり、こうした状況において、李強氏の手腕が問われる場面は多くはあるまい。問題は、経済が好転し、自信を取り戻した習近平氏が再び社会主義的な政策を強めた際に、ストッパーや調整役を李強氏が務めることが難しいことである。
◆経済分野は何立峰副首相が担当しよう。何立峰氏は習近平氏の福建省時代の部下であり、経済全般を管轄する国家発展改革委員会主任を務めた人物である。後任の国家発展改革委員会主任には鄭柵潔氏が就任した。何氏と鄭氏はかつて上司と部下の関係にあった。今後、経済政策については習近平—李強—何立峰—鄭柵潔ラインが、策定・実行していくことになり、伝達はスムーズに機能しよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
全人代も習一色、李克強氏の影響力は即排除
2023年の政府成長率目標は超過達成を前提に「5%前後」に設定
2023年03月06日
-
中国:習3期目政権、最初の全人代の注目点
2023年の政府成長率目標は超過達成を前提に「5%前後」か
2023年02月22日
-
中国:人口減少・少子高齢化と成長力の低下
短期的に再び人口増加の可能性もいずれ不可逆的な人口減少へ
2023年01月23日
-
習近平一強の中国はどこへ向かうのか
~20回党大会と党人事を読み解く~『大和総研調査季報』2023年新春号(Vol.49)掲載
2023年01月23日
-
中国:リベンジ消費で23年は5.6%成長へ
「ウィズコロナ」への不可逆的な転換。懸念は住宅市場と外需
2023年01月20日
-
中国が「ゼロコロナ」政策を完全放棄
景気下振れリスクは低減。日本のインバウンドにはずみも
2022年12月27日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
拡大するランサム攻撃による被害:平時の対策と有事の対応方法
DIR SOC Quarterly vol.9 2024 autumn 掲載
2024年10月10日
-
「東海」「四国」など7地域で改善~石破新政権や海外情勢の動向も注視
2024年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2024年10月09日
-
『Operation Blotless攻撃キャンペーンに関する注意喚起』
DIR SOC Quarterly vol.9 2024 autumn 掲載
2024年10月09日
-
2024年6月株主総会シーズンの総括と示唆
機関投資家の議決権行使の同質化により議案賛成率は2極化
2024年10月09日
-
住宅ローン「5年ルール」は金利上昇から家計を守るか?
2024年10月09日
よく読まれているリサーチレポート
-
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
-
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
-
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日