サマリー
◆国連の“World Population Prospects 2022”によると、中国の人口(中位推計)は2021年の14億2,589万人をピークに減少に転じる。2100年の人口は7億6,667万人に減少するとしているが、これは2019年版の推計より3億人も少ない。背景には、産児制限緩和の効果が限定的であること、住宅コストや教育コストが高騰していることなどを受けて、将来の合計特殊出生率の推計が大幅に引き下げられたことがあろう。
◆一方で、少なくとも今後数十年にわたり中国と覇権争いを演じるであろう米国の人口(中位推計)は、2100年まで増加すると見込まれている。2021年の中国の人口は米国の4.2倍であったが、2050年時点では3.5倍、2100年時点では1.9倍に縮小する。今後、米中の人口比は縮小に向かい、中国の人口規模の優位性は徐々に失われていく可能性が高い。他国の人口の増減に影響を与えることは難しい。さらに自国の高齢者の数を減らす、あるいは抑制する政策を採用することも現実的ではない。中国にしてみれば、自国の合計特殊出生率を中位推計以上に安定的に維持することが、極めて重要な政策課題となろう。
◆しかし、この政策課題の実現は容易ではない。合計特殊出生率の引き上げは早急に実現される必要があるが、子どもが生まれて生産年齢に達するまで社会的負担は増加するため、本来であればもっと早く、取り組みをスタートしなければならなかった。人口の高齢化の進展度合いからすると、中国はタイミングを逸してしまった可能性が高い。覇権を争う中国と米国であるが人口動態からは、長期・超長期的に中国が苦戦を強いられることが示唆されている。
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