サマリー
◆中国版総量規制の導入に、新型コロナウイルス感染症の再拡大に伴う厳格な移動・行動制限が加わり、中国の不動産市場はかつてない落ち込みを経験している。住宅ローン金利引き下げなどのテコ入れ策にもかかわらず、住宅需要が刺激されないのは、住宅を完成前に購入し、銀行への住宅ローンの返済が始まっても、工事中断により、その物件が手に入らない懸念があるためである。デベロッパーへの資金サポートなどにより、工事を再開させることが、不動産市場の不振脱出の第一歩となろう。
◆より長期的な観点で、今後の中国の不動産市場はどうなるのであろうか。中国政府としては、銀行の担保割れを引き起こすような住宅価格の暴落、あるいは調整の長期化は、避けたいところであろう。しかし、その懸念は燻ぶり続ける。中国版総量規制は、住宅に対する需要と供給をともに抑制することで、価格のソフトランディングを目指す意図がある。しかし、この政策によって、不動産の開発と販売に依存した経済発展パターンは立ち行かなくなる。これが経済成長鈍化の一因となろう。
◆今後の中国の不動産デベロッパーの勢力図は、国有企業を主体に、健全性の高い(当局の政策・意図に従順な)民営企業がそれを補完する、という形になる可能性が高い。足元で、国有デベロッパーのデフォルトが極めて少ないこと、資金繰りが厳しくなった民営デベロッパーのプロジェクトは地方政府や国有デベロッパーが買収していることを考えると、不動産市場の国有化が始まっているようにも見える。中国政府としては、政府の関与を一段と強めることで、ソフトランディングの可能性を高めたいところであろうが、人口減少が予想される中で、それが相当なナローパスであることは間違いあるまい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
主要国経済Outlook 2022年9月号(No.430)
2022年08月24日
-
中国:ゼロコロナ政策の弊害と不動産不況
ペロシ議長訪台、電力不足、物価上昇による経済への影響は限定的
2022年08月22日
-
第二次コロナ・ショック、回復は感染抑制次第
中国経済見通しを下方修正、2022年は4%程度の実質成長へ
2022年07月20日
-
中国経済見通し:2022年下半期に本格回復へ
景気浮揚のための政策パッケージを発表
2022年06月22日
-
中国:ゼロコロナ政策下の中国経済の行方
年後半は明確に回復も22年は4.5%程度の実質成長にとどまると予想
2022年05月24日
-
中国:内憂外患、リスクシナリオでは3%台も
メインシナリオは6月以降の景気回復で5.1%成長
2022年04月21日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
-
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
-
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日