中国:不動産に依存した経済発展の終焉

住宅需要・供給の抑制、デベロッパーの国有化でソフトランディング?

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2022年08月31日

サマリー

◆中国版総量規制の導入に、新型コロナウイルス感染症の再拡大に伴う厳格な移動・行動制限が加わり、中国の不動産市場はかつてない落ち込みを経験している。住宅ローン金利引き下げなどのテコ入れ策にもかかわらず、住宅需要が刺激されないのは、住宅を完成前に購入し、銀行への住宅ローンの返済が始まっても、工事中断により、その物件が手に入らない懸念があるためである。デベロッパーへの資金サポートなどにより、工事を再開させることが、不動産市場の不振脱出の第一歩となろう。

◆より長期的な観点で、今後の中国の不動産市場はどうなるのであろうか。中国政府としては、銀行の担保割れを引き起こすような住宅価格の暴落、あるいは調整の長期化は、避けたいところであろう。しかし、その懸念は燻ぶり続ける。中国版総量規制は、住宅に対する需要と供給をともに抑制することで、価格のソフトランディングを目指す意図がある。しかし、この政策によって、不動産の開発と販売に依存した経済発展パターンは立ち行かなくなる。これが経済成長鈍化の一因となろう。

◆今後の中国の不動産デベロッパーの勢力図は、国有企業を主体に、健全性の高い(当局の政策・意図に従順な)民営企業がそれを補完する、という形になる可能性が高い。足元で、国有デベロッパーのデフォルトが極めて少ないこと、資金繰りが厳しくなった民営デベロッパーのプロジェクトは地方政府や国有デベロッパーが買収していることを考えると、不動産市場の国有化が始まっているようにも見える。中国政府としては、政府の関与を一段と強めることで、ソフトランディングの可能性を高めたいところであろうが、人口減少が予想される中で、それが相当なナローパスであることは間違いあるまい。

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