サマリー
◆中国には、①ペロシ米下院議長の台湾訪問とそれに抗議する中国軍による大規模軍事演習、②猛暑と少雨による電力不足問題、③上昇傾向にある消費者物価、④工事中断問題に揺れる不動産市場、⑤「ゼロコロナ政策」による景気下押し、など懸念材料がめじろ押しだが、景気下押し要因としては、不動産不況とゼロコロナ政策への固執が大きい。住宅ローン金利引き下げなどのテコ入れ策にもかかわらず、住宅需要が刺激されないのは、住宅を完成前に購入し、銀行への住宅ローンの返済が始まっても、工事中断により、その物件が手に入らない懸念があるためである。デベロッパーへの資金サポートなどにより、工事中断問題を改善させることが、不動産市場の不振脱出の第一歩となろう。ウィズコロナへの転換が難しい以上、新型コロナウイルス感染症の感染拡大抑制が、今後の景気動向を左右する状況に変わりはないが、8月に入り感染者が再び増加傾向を強めている。
◆2022年7月の主要経済統計を見ると、景気の本格回復はややもたついている。今後の中国経済見通しについて、メインシナリオでは、感染拡大抑制と景気浮揚策の実施を受けて、下半期は前年同期比5%以上の成長率に回帰することを期待している。財政・金融によるサポートに加え、乗用車購入に対する補助金政策などが景気回復を牽引しよう。一方で、ゼロコロナ政策への固執が、引き続き最大の景気下振れ要因となろう。メインシナリオでは2022年の実質成長率は前年比4.0%程度となるが、リスクシナリオでは同2%台に落ち込む懸念がある。
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