サマリー
◆米トランプ大統領が第4弾の追加関税を発表した8月1日以降、元安が進展し、5日には11年ぶりに1ドル=7元を突破した。米財務省は同日、中国を為替操作国に認定した。ただし、中国政府による元安容認は短期間で収束するとみている。元安期待が続けば、中国からの資金流出が強まり、輸入物価上昇にも警戒が必要になってくる。輸出促進という利よりも害の方が大きくなると考えられ、為替レートの安定が再び重視されるようになろう。
◆2019年7月、もしくは1月~7月の主要経済統計は景気の減速が続いていることを示している。7月の鉱工業生産は前年同月比4.8%増(以下変化率は前年同月比、前年同期比、前年比)と、同じ統計で遡れる1995年1月以来の最低の伸び率となった(旧正月の時期のずれによる影響を避けるため1月と2月は平均値で比較)。7月の輸出は3.3%増と6月の1.3%減から増加に転じたが、輸入は5.6%減と3ヵ月連続して前年割れとなった。輸入の減少には内需の弱さが反映されていよう。
◆8月17日、中国人民銀行は貸出市場オファーレート(LPR=Loan Prime Rate)の制度変更を発表した。最大の変更点は、参照する金利が、国務院が変更の権限を持つ貸出基準金利から、中央銀行の公開市場操作金利に変更されたことである。今後は金利政策の機動性が大きく増すと期待できる。8月20日に発表された1年物LPRは従来の4.31%から4.25%に低下したにとどまり、今回の「利下げ」は期待外れであった。ただし、参照とする中期貸出ファシリティ(MLF)1年物金利が2017年1月以降上昇し、2018年4月以降は3.3%で高止まりしていたことを考えると、LPRの低下は、中国人民銀行が景気サポート姿勢を明確にしたことを示しており、注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中国:年後半減速も2025年は5%前後を達成へ
不動産不況、需要先食い、トランプ関税2.0の行方
2025年07月22日
-
中国:内巻(破滅的競争)と上乗せ関税の行方
追加関税大幅引き下げでも製造業PMIは50割れが続く
2025年06月24日
-
中国:関税引き下げを受け、見通しを上方修正
25年は3.9%→4.8%、26年は4.0%→4.2%に上方修正
2025年05月23日
最新のレポート・コラム
-
カーボンクレジット市場の新たな規律と不確実性
VCMI登場後の市場と、企業に求められる戦略の頑健性
2025年07月24日
-
金利上昇下における預金基盤の重要性の高まり
~預金を制するものは金融業界を制す~『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
企業の賃金設定行動の整理と先行きへの示唆
~生産性に応じた賃金決定の傾向が強まる可能性~『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
ドイツ経済低迷の背景と、低迷脱却に向けた政策転換
『大和総研調査季報』2025年夏季号(Vol.59)掲載
2025年07月24日
-
「外国人優遇」は本当か?データで見る国民健康保険・国民年金の実態
2025年07月25日
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日