2024年12月25日
サマリー
◆3月を決算期とする日本の上場企業2,300社超を対象に、2024年3月期の有価証券報告書から女性管理職比率と男女間賃金格差のデータを収集・分析した。また、うち一部の企業を対象に、女性管理職比率や男女間賃金格差についての記述内容を分析した。
◆データが利用可能な約1,800社において、女性管理職比率の平均値は9.8%である。中央値は6.3%で、未だ多くの企業で女性管理職比率は低い。男女間賃金格差は労働者の区分にもよるが、概ね70%前後であり、80%を超えると企業数は大幅に減少する。このことは、女性が受け取る賃金の平均値は、男性のそれの7割前後である企業が多く、8割を超える企業はかなり少ないことを意味する。
◆女性管理職比率や男女間賃金格差には業種による差もある。特に女性管理職比率は差異が大きく、非製造業では平均値が12.5%であるのに対し、製造業では同6.4%と、大幅に低下する。一方、男女間賃金格差は製造業よりも非製造業において深刻である。
◆情報開示の充実化は、日本企業のジェンダー(不)平等をめぐる状況についての、データに基づいたより詳細な把握に貢献すると考えられる。ただし、その充実化に、データについてのアカウンタビリティの向上が伴う必要がある。データを解釈する手がかりとしての説明が十分に提供され、企業とそのステークホルダーとの間でのより効果的な対話が実現することが重要である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
ジェンダー・ダイバーシティと企業パフォーマンス
~有価証券報告書の女性管理職比率と男女間賃金格差を用いた検証~『大和総研調査季報』2024年新春号(Vol.53)掲載
2024年01月24日
-
男女間賃金格差の情報開示
~改正開示府令を受けて日本企業に求められる対応を英国から学ぶ~『大和総研調査季報』2023年春季号(Vol.50)掲載
2023年04月21日
同じカテゴリの最新レポート
-
生活費危機の時代に重要な「生活賃金」
多様なステークホルダーとの「賃金をめぐる対話」が企業の課題に
2025年09月18日
-
EUサステナ開示規制の域外適用見直しへ
米国とEUは関税合意の一部としてサステナ開示の域外適用を見直す
2025年09月12日
-
機械学習による有価証券報告書(2025年3月期)の人的資本開示の可視化
経営戦略と人事戦略の連動や、指標及び目標の設定に課題
2025年08月01日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日