ジェンダー・ダイバーシティと企業パフォーマンス

~有価証券報告書の女性管理職比率と男女間賃金格差を用いた検証~『大和総研調査季報』2024年新春号(Vol.53)掲載

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  • 金融調査部 研究員 中 澪

サマリー

ジェンダー・ダイバーシティと企業パフォーマンスの間にはいかなる関連があるのか。本稿では、TOPIX500構成企業のうち2023年6月時点で有価証券報告書が公表された380社を対象に、女性管理職比率や男女間賃金格差と収益性や市場評価の関連を重回帰分析で検証した。分析の結果、正規労働者の男女間賃金格差が小さいほど、ROA、PBR、トービンのqが高いという関連が明らかとなった。同様に、非正規労働者の男女間賃金格差の小ささはROA、ROE、PBRと肯定的に関連する。本稿の分析結果は、ジェンダー・ダイバーシティの推進が収益性の向上や市場評価に結び付く過程で、男女間賃金格差の是正が重要な役割を果たす可能性を示している。また、日本の市場にジェンダー・ダイバーシティを重要視する規範や価値観が形成されつつあることを示唆していると考えられる。今後、企業の情報開示や投資家とのコミュニケーションの重要性はさらに高まるであろう。企業には、ジェンダー・ダイバーシティの推進やその情報開示がなぜ求められるようになったのかを理解した上で、中長期的な経営戦略に位置付けることや、推進の重要性を組織内で浸透させることが求められる。

大和総研調査季報 2024年春季号Vol.54

大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。

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