2018年11月07日
サマリー
◆管理職、部長職、役員、執行役員の各役職を対象に、2015年度における女性の登用ありと登用なしでグループ分けすると、女性の登用なしよりも登用ありの方がROEやROAの水準が高い。また、ROEの上昇幅はほとんどのケースで女性の登用ありの方が大きく、ROAの上昇幅は管理職と部長職で女性の登用ありの方が大きい。
◆女性登用の有無によるROEやROAの差についての検定を行うと、2015年度以降のROEの水準の差は、統計的に有意な結果が得られたケースが多かった。ROAの水準の差も、部長職では分析対象のすべての年度で統計的に有意であり、管理職についても2016年度、2017年度で統計的に有意となった。
◆各役職での女性比率が上昇した企業と低下した企業(変化なしを含む)でグループ分けした場合は、ROEの水準はほとんどのケースで比率が上昇した企業の方が高く、管理職や部長職ではROEの上昇幅も大きい。ROEの水準の差について検定を行うと、管理職や部長職では2016年度と2017年度で統計的に有意である。管理職については、ROEの上昇幅の差の検定でも有意なケースがあった。
◆ROAの水準は、管理職や部長職では女性比率が上昇した企業の方が高く、ROAの上昇幅も大きい。女性比率の変化によるROAの水準の差を検定すると、管理職と部長職は2016年度や2017年度で統計的に有意となった。
◆管理職とその中に含まれる部長職では、部長職の方が女性の登用とROEやROAが関係している可能性が高いことを示唆する結果を得た。これは、業務内容、権限や責任なども含めて、どのような役職で女性を積極的に登用することが企業価値の創造やイノベーションの促進につながるかなど、さまざまな検討が必要であることを示唆しよう。
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