G20で見過ごされた気候関連財務情報開示

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2017年07月21日

  • 大澤 秀一
  • 物江 陽子

サマリー

◆20カ国・地域(G20)財務大臣・中央銀行総裁会議の付託を受け、金融安定理事会(FSB)により設立された“気候関連財務ディスクロージャータスクフォース”(TCFD)の「最終報告書」が公表された。企業に任意で気候変動に関連する財務情報の開示を促す内容である。


◆同報告書は7月上旬にドイツで開催されたG20首脳会議に提出された。首脳会議では気候変動問題がアジェンダとなったが、事前にパリ協定離脱を表明した米国とその他の国の間の溝は埋まらず、首脳宣言ではパリ協定への立場は両論併記のかたちとなり、TCFDについての言及はなかった。過去2回のG20首脳会議では、首脳宣言でTCFDへの言及があった経緯を考えれば、TCFDの政治的な位置づけは低下している可能性がある。


◆FSBは低炭素経済が急激に訪れることは想定していないが、投資家にとって企業の投融資や保険引受の意思決定に資する気候変動のリスク及び機会を理解し、財務情報として分析するためのニーズは早晩、高まっていくことが予想される。TCFDの最終報告書が気候関連財務情報開示の是非や効果に関する議論を活発化させる契機になることを期待したい。

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