サマリー
◆電気等の住民が生活する上で必要な基礎的インフラについては事業者に供給義務等が課され、全国隅々まであまねく利用できるよう制度が整備されている。“交通”についても必要な基礎的なインフラとして捉えることができるが、現状は公共交通空白地域が居住地の約30%(バス500メートル、鉄道1キロ圏で定義した場合)にも上る。
◆居住者の移動については、自家用車の普及により格段に容易となったものの、運転免許の非保有者は日本の総人口の約3分の1に達する。こうした人々には公共交通機関は必要不可欠であり、環境負荷の低減や歩行機会の増加を通じて健康面からも期待される。
◆しかし、長期的な公共交通機関の利用者数の減少に伴い事業者の経営は厳しく、規制緩和以降、路線の廃止が相次ぐ状況にある。公的支援を切り離して考えれば、運賃の大幅引き上げが困難な中では利用者数の増加以外の経営改善策は考えにくい。
◆自治体の支援を通じた公共交通機関の機能維持も選択肢に入ってくるが、財政負担を伴うことから、地域住民自身が考え協議する場が必要となる。その中で、長期的な視点から、地域が守るべきもの、変えるべきものについて慎重に検討することが肝要である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
地域経済の持続可能性について考える⑨再生可能エネルギー(後編)
再生可能エネルギーの推進と持続的な地域経済への寄与
2016年04月14日
-
地域経済の持続可能性について考える⑧再生可能エネルギー(前編)
再生可能エネルギー導入による地域活性化への期待とギャップ
2016年04月04日
-
地域経済の持続可能性について考える⑦農林水産業(後編)
~TPP協定と持続可能な農林水産業~
2015年12月24日
-
地域経済の持続可能性について考える⑥農林水産業(前編)
大転換期にある地域の“農林水産業”の現状と活性化への施策
2015年12月18日
-
地域経済の持続可能性について考える④
住民が地域に永く住み続けるために必要な自治体間“連携”
2015年09月29日
-
地域経済の持続可能性について考える③
観光は地域経済の持続可能性に寄与するのか
2015年08月25日
-
地域経済の持続可能性について考える②
輸移出と自給率のバランスの上で問われる“成長の質”
2015年07月01日
-
地域経済の持続可能性について考える①
人口減少がもたらす地域経済の諸課題
2015年05月22日
同じカテゴリの最新レポート
-
地方銀行の再編効果
高度化する銀行業における経営統合の意味
2025年12月05日
-
公共施設マネジメントと公会計
〜機能する行政評価〜『大和総研調査季報』2025年秋季号(Vol.60)掲載
2025年10月24日
-
持続可能な社会インフラに向けて 水道広域化のスケールメリットの検証と課題
足下のコスト削減よりむしろ技術基盤の強化
2025年04月22日
最新のレポート・コラム
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
12月金融政策決定会合の注目点
2025年12月12日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

