サマリー
◆上下水道管路の老朽化問題に耳目が集まっている。ただ、経年化の事実が性能劣化と必ずしも同義ではない点には留意が必要だ。財務データが充実している上水道において、管路の入口と出口の水量差から性能劣化を推測する有収率の分布を見ると、耐用年数にかかる管路経年化率よりむしろ管路1km当たり未償却残高との関連性が高い。
◆給水人口が多い大都市ほど上下水道の歴史が古いことからインフラ経年化が進んでいる。他方、現時点においては、管路1km当たり未償却残高の水準は維持されており、有収率に表れるレベルの性能劣化はうかがえない。性能劣化の兆候を早期発見のうえ、管路1km当たり未償却残高を一定水準に保つだけの追加投資を継続できれば、経年化に伴う性能劣化を予防することは可能と考えられる。
◆本稿で示した分解式(性能劣化・維持=管網の効率性×住民負担度)から考察すると、問題は給水人口が少ない地域で深刻だ。管路の接続密度の低さに伴う高コスト構造、人口減少に伴うユーザー1人当たりの高負担構造があり、経年化を補う追加投資の継続に困難を抱え、ひいては有収率の低下が顕著である。コスト負担可能な世代の減少が見込まれる中、将来の負担可能額を設定のうえ、管路1km当たり未償却残高の水準の維持に着眼したダウンサイジング(管路延長の縮減)の検討が急務だ。
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