サマリー
◆財政健全化レポートシリーズNo.2となる本稿では、2015年6月30日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015」に盛り込まれた財政健全化計画である「経済・財政再生計画」について取り上げる。
◆9年ぶりと言える今回の財政健全化計画は、歳出・歳入改革をも成長志向で政策を構築するという点が特徴である。公的部門の効率性向上、公的ストックや民間資金の有効活用、官民を通じた人材の最適配置の促進によって成長力を強化するなど、新たな付加価値創造のための政策の積上げを通じた財政健全化を目指している。
◆2016~18年度の国の一般歳出増加額や2018年度のPB対GDP比に関して具体的な数値が示されたが、いずれも「目標」ではなく「目安」とされた。また、各年度の歳出を一律に抑制することはせず、今後の経済・物価動向等を踏まえるとされるなど、政策の柔軟性確保と計画達成の確度とのバランスも議論がありうるところである。
◆社会保障分野では、医療・介護を中心に検討事項ながらも多くの改革メニューが盛り込まれた。中でも目立つのは「負担能力に応じた公平な負担・給付の適正化」であり、これまでの取組みをさらに強化する施策が検討される。また、「薬価・調剤等の診療報酬及び医薬品に係る改革」では、後発医薬品の使用を促進するために従来の目標の引上げが明記された。新たな目標を達成した場合、従来の目標のケースと比べ、実質医療費は2020年度時点で0.8兆円程度減少すると試算される。
◆当社マクロモデルで試算すると、成長力強化や歳出・歳入改革を計画の目論見通りに実現していくことができれば、PBが2020年度に黒字化する。ただし、デフレ脱却後に名目歳出額を横ばいや抑制的な増加にとどめるためには、相当な戦略やルール、政治的リーダーシップが求められる。また、成長力強化を財政健全化計画の前提条件とする以上は、それが“楽観的な前提”とならないよう、成長戦略を担う組織や会議体等との連携を深め、2%超の潜在成長率の実現と財政健全化計画との結びつきをより明示的に取り扱った改革の進捗管理が必要ではないか。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
財政再建シナリオの検討 ~マクロモデルによるシミュレーション
歳出抑制・負担増・成長力強化のすべての取組みがやはり重要
2015年10月29日
-
社会保障と財政の長期見通し
一定の経済成長の下でも、現在の社会保障制度・財政は維持できず
2015年09月17日
-
内閣府の中長期試算から財政再建を考える
厳しい歳出抑制と経済再生ケースの実現が必要
2015年08月17日
-
今春から本格化する社会保障制度改革
真の意味での社会保障・税一体改革の姿を示すべき
2014年01月29日
-
新しい財政健全化計画の策定に向けて ~ベースとなる内閣府中長期試算の検証
長期的な視点に立った財政健全化計画の策定が期待される
2015年04月08日
-
財政再建に関する最近の論点
やはり容易ではない基礎的財政収支の黒字化
2015年06月19日
同じカテゴリの最新レポート
-
財政安定化の条件:ドーマー条件成立だけでなく、PB黒字化が重要
財政シリーズレポート4
2026年03月13日
-
国・地方のPBは2026年度に均衡する?
補正予算編成でPB赤字の公算大
2026年01月14日
-
財政政策と金融政策の境界線 -金融政策の進化と副作用としての中央銀行の独立性の危機
財政シリーズレポート3
2025年12月15日
最新のレポート・コラム
-
中間配当の導入は株価を動かすか
開示直後は好感されるも、効果のインパクトや持続力は弱い
2026年07月17日
-
経済産業省「公正な買収の在り方に関する研究会」による企業買収行動指針のポイント・Q&A(案)
指針の趣旨を明確化~「企業価値」や「望ましい買収」とは?~
2026年07月17日
-
「トランプ口座」始動、未来の株主多数輩出
口座開設、「収益獲得」ではなく「次世代投資家との接点」
2026年07月17日
-
データサイエンスを踏まえた年金数理理論の人的資本分析への発展可能性
新たな退職率算定方法による退職要因分析への応用
2026年07月17日
-
AI時代の競争力を生むのは誰か? ~シリコンバレーとシアトルが示す「人材エコシステム」の力~
2026年07月17日
よく読まれているリサーチレポート
-
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
-
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
-
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
-
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日

