サマリー
◆2015年7月22日に改訂された内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(中長期試算)を前回2月の中長期試算と比較すると、税収見通しはGDP比で上昇しているが、長期的な税収弾性値には変更がなく1.0程度と見込まれている。
◆経済・財政再生計画を実現するためには、中長期試算が描く以上に歳出を抑制する必要がある。経済再生ケースの場合、国の一般会計の一般歳出が2015年度から2018年度にかけて5兆円の増加となっているが、これを2兆円近く抑制して3兆円強程度にとどめることが目安だろう。中長期試算の歳出の想定はかなり厳しいものだが、財政健全化目標の達成にはさらに厳しい歳出抑制が不可欠である。
◆前回の中長期試算と比べて基礎的財政収支は上方修正されたが、依然として経済再生ケースにおいても2020年度までの黒字化は実現できない見通し。ただ、経済再生ケースでは2023年度に基礎的財政収支が均衡にかなり近づいている。経済・財政再生計画を進めていくことができれば、2020年度の財政健全化目標の達成も視野に入る。
◆ただし、言うまでもなく、それには経済再生ケースが描く経済環境を実現する必要がある。経済再生ケースを実現するためのポイントとして、①潜在成長率の引上げ、②息の長い景気拡大の実現、③賃金・物価上昇とそれによる行き過ぎた円高の発生やそのリスクの回避、の3つを指摘できる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
内閣府中長期試算にみる財政健全化目標の達成可能性
経済再生ケースに近づかない現実の経済
2016年01月28日
-
財政再建シナリオの検討 ~マクロモデルによるシミュレーション
歳出抑制・負担増・成長力強化のすべての取組みがやはり重要
2015年10月29日
-
社会保障と財政の長期見通し
一定の経済成長の下でも、現在の社会保障制度・財政は維持できず
2015年09月17日
-
新しい財政健全化計画の策定に向けて ~ベースとなる内閣府中長期試算の検証
長期的な視点に立った財政健全化計画の策定が期待される
2015年04月08日
-
財政再建に関する最近の論点
やはり容易ではない基礎的財政収支の黒字化
2015年06月19日
-
三度目の正直を期待したい~実効性の確保が求められる財政健全化計画
成長力強化と歳出改革を実現すれば20年度にPBが黒字化する可能性
2015年07月23日
同じカテゴリの最新レポート
-
日本の財政の現状② 歳出と収支
財政シリーズレポート2
2025年07月18日
-
日本の財政の現状① 債務残高と歳入の特徴
財政シリーズレポート1
2025年06月12日
-
PB赤字は2026年度も続く?
予算修正とトランプ関税で3~4兆円の財政悪化も
2025年05月13日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日