サマリー
◆与党の「令和6年度税制改正大綱」に基づいて起草された地方税法等改正法案(正式名称は「地方税法等の一部を改正する法律案」)では外形標準課税の改正が示された。本稿では、外形標準課税の改正が行われる背景と改正内容について解説する。
◆外形標準課税とは(現行制度では)資本金1億円超の普通法人に対して、法人事業税のうちの付加価値割と資本割を課す制度である。法人の所得以外の要素(外形)を基準に事業規模を判定して課税される。所得を課税標準としないことで、景気変動の影響を受けにくい安定財源として地方公共団体に活用されている。
◆ただ、資本金1億円超が基準となっていることで、減資によって課税を逃れるケースが増加している。他にも、分社化・持株会社化によって子会社の資本金が減少し、課税対象から外れるケースもある。実質的に大規模な法人が外形標準課税の対象外となるケースも増加し、対象法人数は制度導入直後の約3分の2まで減少している。
◆改正により、外形標準課税の基準として資本金1億円超は維持しつつも、減資への対応として、資本金1億円超の企業が資本金1億円以下となった場合も「資本金+資本剰余金」の合計額が10億円超であれば、引き続き外形標準課税の対象となる。加えて、分社化・持株会社化への対応として、大企業の100%子会社の「資本金+資本剰余金」の額が2億円超の場合は外形標準課税の対象になることが示された。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
2024年度税制改正解説-金融・証券税制
税制適格ストックオプション制度の拡充など
2024年02月26日
-
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
同じカテゴリの最新レポート
-
金融庁、NISAのこども支援措置・投資商品入替措置などを要望
令和8年度税制改正要望—NISAの全世代化に向けた取組みが続く
2025年09月11日
-
道府県民税利子割への清算制度導入を提言
令和8年度税制改正での実現は不透明な情勢
2025年08月13日
-
2012~2024年の家計実質可処分所得の推計
2024年は実質賃金増と定額減税で実質可処分所得が増加
2025年04月11日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日