サマリー
◆自由民主党・公明党は2023年12月14日に、2024年度の税制改正大綱を公表した。1998年以来26年ぶりに行うとされた定額減税(定額の税額控除)は、経済対策として実施することには疑問が多い。一方、インフレが進む中で、低所得世帯の税負担を抑えつつ中位以上の世帯の所得税の累進構造を回復させるためには、インフレ調整として税額控除を導入し、控除額を引き上げていくという方法も有効である。
◆高校生分の扶養控除については、民主党による税制改正が行われる前の2010年度改正前の税制を基準とし、共通分(所得税38万円・住民税33万円)の所得控除額を児童手当に置き換えることで中学生以下と統一させ、高校生への上乗せ分(所得税25万円・住民税12万円)を復元させる方針を示した。実施されれば、現行制度比では世帯年収にかかわらず手取りがプラスとなり、2010年度改正前比でも夫婦のうち多い方の年収が1,210万円程度までの世帯で手取りがプラスとなる。
◆法人税では、イノベーションボックス税制が導入され、企業が新たに取得する知的財産権から得るロイヤリティや譲渡収入に30%の所得控除が認められる。また、戦略分野国内生産促進税制が導入され、半導体や電気自動車などの戦略分野につき、国の認定を受けた計画に基づき国内生産する場合、生産量に応じた税額控除が認められる。これらは、企業の予見可能性に配慮し、長期の措置となった。
◆防衛財源確保のための増税実施時期は今回も決定することができず、(児童手当との相殺前の)税単体では負担増となる高校生の扶養控除の見直しも方針を示すのみで最終決定はできなかった。財政規律に課題を残す税制改正となった。
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