サマリー
◆配偶者控除そのものは女性就労の妨げとなる実質的な要因にはなっていないが、企業における配偶者手当支給の基準と密接に結びつき「103万円の壁」を形成しており、配偶者控除が廃止されることが配偶者手当の見直しにつながれば「103万円の壁」は消失する。もっとも、この場合でも社会保険加入の壁は残るため、直接的には、女性の就労促進は103万円から130万円(または105.6万円)の範囲にとどまるだろう。
◆ただし、配偶者控除の廃止と夫婦控除の導入の実現の有無にかかわらず、その議論の過程で、日本の税制が共働き有利であるとの認識が国民に広まれば、単なる103万円の前後の就業調整の問題にとどまらず、女性就労を大きく促進する可能性も考えられる。
◆本稿では、税収中立のもと現役世代につき配偶者控除を廃止し夫婦控除を導入する5つの案を想定し、夫婦の年収が各0万円~1,500万円である169通りのモデル世帯における手取りの増減の試算結果を示した。これらのメリット・デメリットの検証を通じて、議論が深まることが期待される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
配偶者特別控除の拡大では就労促進効果は乏しい
改正案には比較的所得の高い高齢者に減税の恩恵が及ぶ面も
2016年12月02日
-
あるべき上場株式等の相続評価に向けて
金融庁、上場株式等の相続税評価の見直しを要望
2016年10月20日
-
新旧児童手当、子ども手当と税制改正のQ&A
所得制限は夫婦のうち年収の多い方で判定
2012年05月14日
-
女性活躍を進めるために男性ができることとは?
家計を読み解く意外な数字 第11回
2015年10月05日
-
年収1,000万円を超えると税金が大きく増えるって本当?
家計を読み解く意外な数字 第5回
2015年09月24日
-
年収1,000万円前後の層に負担増が集中する
平成26年度税制改正大綱(所得税)と家計関連の予算の解説
2014年01月28日
-
女性活躍を進めるために男性ができることとは?
家計を読み解く意外な数字 第11回
2015年10月05日
-
女性をとりまく社会保障制度と税制
~最大の課題は「130万円の壁」~『大和総研調査季報』 2013年新春号(Vol.9)掲載
2013年03月01日
-
2017年度税制改正でNISAはどう変わる?
金融庁、積立NISAの導入・現行NISAの投資可能期間の恒久化を要望
2016年09月13日
同じカテゴリの最新レポート
-
金融庁、NISAのこども支援措置・投資商品入替措置などを要望
令和8年度税制改正要望—NISAの全世代化に向けた取組みが続く
2025年09月11日
-
道府県民税利子割への清算制度導入を提言
令和8年度税制改正での実現は不透明な情勢
2025年08月13日
-
2012~2024年の家計実質可処分所得の推計
2024年は実質賃金増と定額減税で実質可処分所得が増加
2025年04月11日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日