サマリー
◆2016年8月31日に、金融庁は「平成29年度税制改正要望項目」を公表した。本稿は、金融庁の税制改正要望のうち、NISA関連について解説・分析する。
◆金融庁は、①積立NISAの創設(年間非課税枠60万円×非課税で保有できる期間20年間)、②現行NISAの非課税で保有できる期間の終了時の扱い(非課税枠を一定額超過してもロールオーバー可、評価損発生時は簿価で課税口座に払出し)、③現行NISAの新規投資が可能な期間の恒久化の3点を要望している。
◆積立NISAには制約が多く、導入が実現しても現行NISAと比べて積立NISAの利用が有利となる層はかなり限定されるだろう。ただし、制度面では不利であっても、積立NISAが選択肢を減らして選びやすいようにした「投資初心者向けの制度」として発展する可能性もある。現行NISAの新規投資が可能な期間の恒久化は、現行NISAの利用の一層の進展に資するものと考えられる。
◆金融庁の要望が実現しても、NISAには使いづらい面がなお残る。NISAを簡素で使いやすく、分かりやすい制度とし、個人投資家の資産形成をより一層支援する制度とするためには、筆者は、主に、「2つの恒久化」と、非課税枠の「拠出額」で管理することの2点を実現すべきと考えている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
税制改正大綱—積立NISAの創設等
非課税枠40万円・20年間の積立NISAは投資初心者向けに普及か
2016年12月19日
-
配偶者特別控除の拡大では就労促進効果は乏しい
改正案には比較的所得の高い高齢者に減税の恩恵が及ぶ面も
2016年12月02日
-
あるべき上場株式等の相続評価に向けて
金融庁、上場株式等の相続税評価の見直しを要望
2016年10月20日
-
配偶者控除改正で家計と働き方はどう変わる?
「夫婦控除」の税額控除額は4.5万円~5.4万円に
2016年09月27日
同じカテゴリの最新レポート
-
道府県民税利子割への清算制度導入を提言
令和8年度税制改正での実現は不透明な情勢
2025年08月13日
-
2012~2024年の家計実質可処分所得の推計
2024年は実質賃金増と定額減税で実質可処分所得が増加
2025年04月11日
-
「103万円の壁」与党修正案の家計とマクロ経済への影響試算(第5版)
所得税の課税最低限を160万円まで引き上げる与党修正案を分析
2025年03月19日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日