サマリー
労働力減少社会にもかかわらず、男女共同参画社会の実現が遅れている。就業を希望する女性が普通に働ける環境づくりから始める必要がある。
日本のような個人単位課税は、世帯単位課税と比較した場合、夫に扶養される無業の妻の就業阻害要因にはなりにくい仕組みである。他方、年金制度は原則個人単位だが、第3号被保険者制度は世帯単位の設計といえる。そして、社会保障制度には就業に伴い保険料負担が急増する「130万円の壁」がある。
本稿の試算によれば、年収130万円未満なら配偶者に対する就業抑制要因はない。だが、130万円以上で200万円程度までの年収では限界負担率が50%を超え、著しく就業抑制的な制度となっている。標準的なパート労働の時給だと週30時間前後で年収130万円以上となる。かといって週40時間まで就労しても年収200万円を超えられない辺りに、就業調整インセンティブが働きやすいと考えられる。
「社会保障と税の一体改革」は短時間労働者の社会保険適用について中途半端であり、第3号被保険者制度の改革論議は当初段階から先送りされた。「130万円の壁」を取り払う方法はいくつか考えられるが、いずれにしても、ある閾値を境に保険料負担等が急増する仕組みを早急に改めるべきだ。
大和総研リサーチ本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
「130万円の壁」を越えて手取りを大きく増やすにはどうしたらいい?
家計を読み解く意外な数字 第7回
2015年09月29日
-
配偶者控除の改正で女性の働き方は変わるか
「103万円の壁」を取り除くために必要なこととは
2014年04月28日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
-
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
-
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
-
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
-
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日