サマリー
◆2016年11月21日に与党税制調査会における平成29年度税制改正の議論がスタートし、配偶者控除見直し案がまとまってきた。本稿では報道により有力視される改正案が実施されることを前提に、政策効果を分析する。
◆改正案は「配偶者控除」の対象年収は変えず、「配偶者特別控除」の対象年収(夫婦のうち年収の低い方)を現行の141万円未満から、約201万円以下に改正する。一方、配偶者控除について世帯主(夫婦のうち年収の高い方)の年収が1,120万円超である場合に控除額を減らし、世帯主の年収が1,220万円超である場合は対象外とするとしている。
◆この改正案は、安倍首相が指示した当初の改正の目的にほとんど合っていないものと考えられる。「配偶者控除」の適用拡大ではなく「配偶者特別控除」の適用拡大であるがゆえに企業の配偶者手当に直接影響を与えることが考えにくく、就業調整の動機である「103万円の壁」は当面残るものと考えられる。また、改正案は、若年低所得層の結婚の後押しになりうるが、その効果はごく僅かと考えられる。
◆12月8日とされる「平成29年度税制改正大綱」の決定まではまだ若干の日程が残っている。当初の改正の目的に相応しい改正案となるよう、再考の余地があるのではないか。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
2017年度改正税法のポイント(個人編)
つみたてNISAの創設、配偶者控除改正、非上場株式相続評価見直し等
2017年06月07日
-
あるべき上場株式等の相続評価に向けて
金融庁、上場株式等の相続税評価の見直しを要望
2016年10月20日
-
2017年度税制改正でNISAはどう変わる?
金融庁、積立NISAの導入・現行NISAの投資可能期間の恒久化を要望
2016年09月13日
-
配偶者控除改正で家計と働き方はどう変わる?
「夫婦控除」の税額控除額は4.5万円~5.4万円に
2016年09月27日
同じカテゴリの最新レポート
-
「年収の壁」とされる課税最低限の引上げはどのように行うべきか
基礎控除の引上げよりも、給付付き税額控除が適切な方法
2025年12月02日
-
日本維新の会が掲げる税制関連施策
所得税インフレ調整・給付付き税額控除の議論が加速する見込み
2025年10月28日
-
若年層の実質可処分所得の超長期推計
20~34歳未婚男女につき、1980~2024年の45年間を推計
2025年10月20日
最新のレポート・コラム
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
12月金融政策決定会合の注目点
2025年12月12日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

