サマリー
総務省「家計調査」の「二人以上の勤労者世帯」を用いて、1988年~2023年における家計の税・社会保険料負担を分析した。
実質でみた家計の実収入については、女性の収入が増加したものの、世帯主収入が減少したため、2023年は1988年とほぼ同水準にとどまる。税・社会保険料負担率は1988年の20.6%から2023年には25.9%に上昇している。内訳を見ると、間接税負担率の上昇分が直接税負担率の低下分により打ち消され、ほぼ社会保険料負担率の上昇分だけ負担率が上昇した。2023年の実質可処分所得は1988年比で月1.1万円減少し、実質消費はそれ以上に同5.3万円減少した。所得五分位別に見ると、直接税の累進性が緩和される一方、比例的な社会保険料、逆進的な間接税のウエイトが高まり、所得階級別の税・社会保険料負担率の差が大きく縮小している。
少子高齢化の進展を踏まえると、最大限の改革を行ったとしても、いずれ社会保険料率や消費税率の引き上げの議論は避けられないだろう。その際には、低所得世帯に過度な負担とならないよう、給付付き税額控除の実施など、直接税の累進性を強化する必要があるだろう。

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