米国、中規模銀行に対する規制は見直しへ

FRB等が報告書を公表。更なる銀行破綻で規制強化は待ったなしか

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サマリー

◆2023年4月28日に、連邦準備制度理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)、ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)、米国政府説明責任局(GAO)は、シリコンバレーバンク、シグネチャーバンクの破綻原因や当局の対応を検証する報告書をそれぞれ公表した。

◆シリコンバレーバンクに関するFRBの報告書では、今般の破綻の原因として同行のリスク管理の失敗を挙げているが、それに加えて、監督当局の監督・規制の問題点及び今後の見直しについて多く記載されている。

◆今般の報告書で特に注目されたのは、トランプ前政権時の2018年に議会で成立した「経済成長、規制緩和、消費者保護法」(Economic Growth, Regulatory Relief, and Consumer Protection Act:以下、EGRRCPA)及びそのもとで制定されたFRB規則の問題点に対する指摘である。報告書では、EGRRCPAやFRB規則が組み合わさって弱い規制の枠組みになったとしており、連結総資産1,000億ドル以上の銀行を対象とした規制を見直すとしている。

◆FRBは、今回の報告書を出発点として、連結総資産1,000億ドル以上2,500億ドル未満の銀行持株会社に対する規則の改正に向けて取り組むことになる。スケジュールについては、早ければ今夏に規制案が公表されパブリックコメントの募集が行われ、2024年夏頃には新規制が公表されることが想定される。

◆ただし、報告書公表後の5月1日(米国時間)にシリコンバレーバンクより資産規模が大きいファーストリパブリックバンク(FRC)が破綻したことで、規則最終化の時期が早まる可能性があることに留意する必要があるだろう。その意味では、報告書公表後に初めて開催される5月2日、3日のFOMC(連邦公開市場委員会)において、パウエルFRB議長が本報告書や今後の規制の見直しに関して、如何なるメッセージを発するかは注目に値するだろう。

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